傑作ホラーコメディでした。原典として引用されている怪異「八尺様」はインターネットより産声を上げ、だが今や母たるインターネットの手により殺められ、解体し尽くされる存在だ。
今や後付けのミームと不可分のものと化し、怪異性を喪った彼女を更に小突き回す本作は、Twitter映えのスマブラとでも言うべきネタの氾濫を起こしながらも、当の八尺様(ここでは尺八様だが)に、失ったはずの怪異性を返上させるという離れ業をやってのけている。彼女はいま、再び恐怖を勝ち取ったのだ、「八」と「尺」の位置を逆にされたとしても、巡り巡って少年に恐れられる夏の怪談に戻れたのだろう、本当か?
「あああああああああああああ!!!!!!!絶対なる笑いが襲いかかる!!!!!」
俺は笑い死にした。
必ず、この邪知暴虐な本作をはてなインターネット文学賞で一位にせねばならぬと決意した。
俺には文学が解らぬ。俺は、作者の虜である。名作を読み、レビューを並べて暮して来た。けれども本作に対しては、人一倍に敏感であった。
襲い来る刺客、それは笑いという名の暴力。
ひとたび読み進めれば「私、笑いのクオリティが6500倍上昇してる爆笑ネタを前に息出来ない状態でクイズ大会に出るんですか!?」とばかりに次に何が来るのかを予想させられ、それを遥かに超えたクオリティのネタに殴り飛ばされる。
これはまさに春海水亭先生の集大成であり、我々の腹筋とか横隔膜とかそういうなんか難しい漢字の名前がついた部位を破壊するためだけのトラップダンジョンなのだ。
皆さんも軽い気持ちで本作を読み、そのまま笑い死んでもらいたい。
たとえそのせいで幽霊になっても安心していただきたい。春海水亭先生は怖い方のホラー作品も得意としているので、なんかこう、上手く扱ってくれるだろう。