月は満ち、そして欠け、また満ちる。すべてはもとのおさまるべきところへ

戦争に負け、敵国に捕らえられたシトリューカ。彼女は敵国の将軍に払い下げられ、その将軍とともに生活することになるが――

というあらすじに嘘偽りは一切ありません。
しかし、物語はあれよあれよとあらぬ方向へ転がっていきます。

最初はシトリューカを取り巻く恋模様を描いたラブロマンスかと思いながら読み始めましたが、ヨナディオの死にまつわる不可解な現象、第三国からやって来たディエナの登場、そしてその中心にいるシャルルの周囲のキャラクターには明かされない秘められた胸中……すべてが絶妙なバランスで絡み合いながらも話がシトリューカの内側から外側へ広がっていきます。

この話を拝読している間に、私は自分が創作における固定観念にとらわれていたことに気づきました。いわゆる「物語のお約束」というものです。
こういうキャラならああいうことをするだろう、そういう関係ならこういうことになるだろう――そういうテンプレートを意識するあまり、世界観の奥行というものに鈍感になっていたような気がします。
でも、キャラクターたちの本当の幸せとは何なのか? 彼ら彼女らは何を想い何を果たすことを考えて生きているのか?
それを真に考えた時たどりつく「物語の結末」はどこか?
そこを考えた時、作者様のキャラクターに対する誠実さ、真摯な姿勢を見てとったのです。

いやー、ディエナ本当によかったね。君が満足なら私も嬉しいよ。