作者さまがまだお若いのかな?鬱屈とした少年少女の一夏の物語。
端的に申し上げて最高でした。
異能が何なのか。
キーワードとしての異能を軸に、物語が展開していきます。
登場人物は皆、年齢相応に身勝手なんですけれども。
それがすごく良かったです。
圧倒的な閉塞感の中、主人公の優菜は旅に出ます。
けれども、SNSやメッセンジャーの存在が彼女を解放してくれない。また、優菜も出たいような出たくないような。心の揺れ動きがあるのです。
否応なしに大人になる非常に繊細な年頃。
そんな少年少女特有の変化を拒む気持ちが随所にちりばめられていました。一見、変化を受け入れているように見える土屋もどうなのかな……と考えてしまいました。
揺らいでるからこそ、大きく振り切って大丈夫なフリをする。
一言紹介には、ウィリアム・ギブスンの有名な詩を引用させていただきました。
願わくば、少年少女たちが「そんな事もあったね」と笑える大人になれるよう。そんな風に思いました。
高校生の少女たちの、日常だったり恋愛だったりの物語。
すごい。内容をどう説明すればいいやらわからないほど、すっかり圧倒されてしまいました。
説明文の通り壮絶な展開を含む、というのもあるのですけれど、それ以上にまず本文を読んでいるときの感覚が凄まじい。
彼女らの認識、平素の心のあり方そのものが、いちいちこちら(読者である自分)の感覚と摩擦を起こしてヒリヒリする感じが本当に最高でした。ただ読んでるだけで面白い……!
いざ読み終えてみると一貫した展開のようなものを感じるものの、それが読んでいる最中はどこかとりとめもなく感じられた、その主人公の語り口(というか、物事の認識、あるいは主観のあり方)が大好き。
物語やその都合よりも、彼女個人がきっちり作品の真ん中にいる感覚。
周囲の友人らや目の前の物事など、それを自分なりに解釈する感覚の、その危うさや不完全さのようなものがもうとにかくたまりません。
絶妙に遠慮のない感じだったり、何か大事なものをぼろぼろ取りこぼす感覚だったり。なんで読んでてこんなに気持ちいいんだろう……麻薬か……?
終盤の展開はもう圧巻でした。
はっきり息苦しい感覚があるのに、でももったいなくて一文一文じっくり読んでしまった、そんな経験は初めてです。
まだ若干興奮しているためうまく説明できないんですけど、とにかく面白かったです。すごい! 最高! 大好き!