淡々と、一定のスピードを維持しつつ描き出されていく情景描写が非常に魅力的です。
くどくどと説明されているわけでもないのに、美しい夏の夜、アイスキャンディー、登場人物の造形など、「これって世界観の説明には必須だよね」という景観に呑み込まれます。その先にいるのが『鯨』なのだと解釈いたしました。
心理的にも、アイスキャンディー売りのおじさんと主人公の関係性、主人公の家庭環境、絵画を制作していくプロセスなどで推し測ることが可能となっています。
からっとドライな雰囲気なのに、瑞々しい描写(特に鯨)が描き込まれた、でもそれらが矛盾せずにその場に存在し続けている。
不思議な魅力にあふれた作品でした。