自分の「幸せ」を譲渡できる能力を得たら、あなたならどう使うだろうか?

主人公である「親父」さんは、ひょんなことから自分の「幸せ」を自分の采配で「他人に切り売り」できる能力を持つことになります。
文字どおり、「切り売り」なので「対価」を得て売買契約は成り立つわけです。

ですが、親父さんはその「対価」を受け取りません。
ただ、ひたすら「譲渡」するばかり。
底抜けにお人好しで、余りにも無欲で、
どうにかなると楽天的なのに、自分自身の「価値」には全く無頓着。

結果、親父さんはご家族にも周囲にも誤解されたまま、
病魔に侵され孤独にこの世を去ってしまいます。
残されたご家族は、親父さんの死後、日記と芳名帳で親父さんの人生を追体験することになり、そして深く後悔することになってしまいます。

この作品の根底には、家族も他人も区別なく「優しさ」と「後悔」のアンバランスさが付き纏います。
誰もが自分の人生を生きることに精一杯で、誰が悪いわけでもない。
ほんの少し、意思の疎通と言葉が足りなかっただけなのに、
「親孝行したい時に親はなし」という悲しい現実に見舞われてしまいます。

この物語では、苦しい後悔が次のチャンスへと繋がっていきます。
前半は親父さんと息子さんを軸に回顧録として展開し、
後半は奥さんと親父さんの後日談として、時代を飛び越えて急展開していきます。

人情味あふれるノスタルジックなヒューマンドラマと、
カクヨムらしい異能と転生要素が盛り込まれた、心温まる優しいお話です。
ぜひ読んでほしい。

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