トゲのように刺さる小説。不快感こそ良い

 僕の頭からは出てこない小説です。
 たとえば、この「人工知能戦争」は、アメリカが超高度人工知能を手に入れて世界制覇する話ですが。
 もともと最強のアメリカが最強の人工知能を手に入れたら、勝って当たり前だから面白くないだろう? 北朝鮮みたいな弱い国や、オウムみたいなカルト教団が手に入れて、アメリカや日本より強くなってしまうほうがエキサイティングじゃないか? フィクションなんだから世界をひっくり返せよ。
 ぼくだったらそう考えて小説書きます。
 
 でもこの作者はそうは考えないんです。
 勝って当然の国が、当たり前のように勝つ姿を、身も蓋もなく、楽しそうに描くんです。
 何の恥ずかしさも罪悪感も感じられないんです。
 前に書いていた、中国とアメリカが戦争する話もそうでした。

 そこが、トゲのように刺さってきて……不快感なので、逆に面白いです。
 世の中こんなものなのかなあ……??