最終話.被虐待児は異世界で優しい家族に囲まれ幸せに――
世界に大きな祝福が降る。
その祝福は、形となり、温かい雪のように世界に降り注いだ。
荒廃した大地に次々新しい命が宿り始める。
そして、地上に住む全ての人々が外を走り回り、今日のこの日を祝福した。
『平和の日』。
世界で最も大事にされる日となるその日は、誰もが『戦争』を思い出す日である。
戦いから生まれるのは憎悪しかない事を世界に広めた女神教会とアカバネ大商会。
彼らはアハトシュラインの襲撃後、全力で全ての地域の復興を手伝った。
その甲斐もあり、一年もすると、大陸は見違えるほど復興が進んでいた。
更には、他種族が住む街も多数建設され、それぞれの種族がそれぞれの問題を越え、一つになりつつあった。
その日は、世界の全ての人々に向けて、『女神教会』からの演説が広げられた。
ステージの上には美しい衣装に身を纏った、『聖女アリサ』が登壇した。
「私、聖女アリサが『女神クロティア』様より神託を授かっております。世界の全ての命ある者へ、神託を授けます」
演説を見ている全ての街の人々はその場に跪いた。
「戦争は終わり、人々に平和が訪れました。ですが、決して忘れないでください。戦いは憎悪を生み、また大きな火種となります。人々よ。隣人を愛しなさい。隣人を慈しみなさい。そして、手を取って同じ道を歩むのです。種族の差があれど、同じ道を歩む命。これからの世界には全ての民に祝福があるでしょう」
演説が終わり、歓声に包まれた世界は、平和へと加速して行った。
◇
――八年後。
「父さん! はやくはやく!」
「ああ、急ごう」
少年は、父の手を引き、大きな木の下にある部屋に入っていた。
そして、その後から美しい女性と可愛らしい少年少女達も続いて入って行った。
部屋の中は広場になっており、その奥には綺麗な水色の大きい物体が部屋中に張り巡らされていた。
その一番下に、顔のような部分があり、その顔は安らかに眠っているようだった。
「父さん! 楽しみだね!!」
「ああ、やっとリク達にも会わせる事が出来るんだ」
「やった!!」
リクと呼ばれた少年と、その後ろから現れた少年少女達が声を上げて喜んだ。
彼らを優しい目で見守る美女達が、それぞれ小さい赤ちゃんを抱いている。
父は祭壇の上に『
「本当に長かった…………時間が掛かってしまってごめんね。これで……また会えると思うから。まずはみんなでごめんなさいしないとね」
「うん! みんなごめんなさいの練習するよ!」
リクの声に少年少女達が一斉に頭を下げた。
「よし! 父さん、これなら大丈夫! はやくはやく!!」
「ああ、……ふぅ、頑張ろうか」
男は祭壇の前に立ち、両手を『
――――そして。
◇
どれくらい時間が経過したのだろう……。
私はちゃんと守れているのだろうか?
遠のく意識を、何度も掴み離さない。
それを繰り返し続けた。
何度も。
何度も。
…………何度目なのだろうか。
…………ご主人様は元気に過ごしているのだろうか。
私がいなくて……ううん、今のご主人様には奥様達がいるから大丈夫ね。
…………私も一緒にいたかったな……。
その時、遠のく意識の中に激しい炎が立ち上った。
「――――ア!」
え…………。
誰が呼んでる?
「――ソフィア!」
私の……名前?
「ふぅ、やっと繋がった、もう少し遅ければ危なかったな」
えっと……おじさん、誰?
「うむ。俺の名は『シヴァ』という」
シヴァおじさん?
初めて聞くけど……。
「ああ、初めましてだとも。だが、俺がここに来たのは、君の、いや、君の主人の為に来た」
ご主人様を知っているの?
「ああ、命の恩人でな。今、その恩を返す機会だと思ってな」
おじさん、凄い人みたいだけど……。
やっぱご主人様凄い。
「ああ、君の主人は本当に凄いやつだよ。あいつは今でも君を助け出そうとしている。それまで、君の意識が飲み込まれないように、俺がここに一緒にいよう」
えっ……いいの?
「元々そのつもりだ」
何年も……何十年も掛かるかも知れないよ?
「構わん、だが、あいつの事は、数年で終わるさ」
ご主人様だもの!
うん!
きっとすぐ来てくれるね!
分かった!
私ちゃんと待つから、おじさん、これからもお願いします!
「おう、元気になったようだからな、俺が美味い紅茶をご馳走してあげよう」
ん…………それって『ロイヤル紅茶』じゃん!
「そうだとも! これ以上美味しい紅茶はないからな」
えへへ! それうちのご主人様が作ったんだよ!
「そうだな。あいつの偉業の一つに過ぎないがな」
えへへ!
それからどれくらいの時間が経ったのかは分からない。
でも私はずっとシヴァおじさんと他愛無い事を話して、ご主人様の事を自慢したりして時間を過ごした。
――――そして。
【――――――ア!】
「ああ、来たみたいだな」
この……声……。
「ああ、あいつにあったら、今度美味しい食べ物持ってくるように言っておいてくれ」
うん! 分かった!
シヴァおじさん! ありがとうね!
「さあ、早く行ってやれ、
うん! ありがとう!!
【――――フィア!】
【――――フィア!】
――――。
――――。
――――。
【【【ソフィア!!!!】】】
私を呼ぶ沢山の声が聞こえた。
初めて聞く声が沢山いる?
寧ろご主人様がいない?
あれ?
――――そして、私は目を覚ました。
「「「「「お帰りなさい!! ソフィアちゃん!!!」」」」」
そこにはご主人様にそっくりな少年少女達がいっぱいで、みんなが私を抱きしめてくれた。
そして、少年少女達の向こうに、大きな涙を浮かべた――――
「ただいま!! ご主人様!!」
私を捨てなくてありがとうね!
私を拾ってくれてありがとうね!
「あはは……久しぶりに抱っこすると軽くなってるな、これからはう~んとご飯食べて貰わないとね」
「うん! 直ぐに元気になるんだから!」
「ああ、でもゆっくりでいいよ。だって……これからはずっと一緒なんだから…………ああ、そうだ。ソフィア」
「どうしたの? ご主人様?」
ご主人様は小さな箱を取り出して、中身を私にくれた。
「ソフィア。最後の指輪、貰ってくれるかい?」
「その……指輪って…………」
私は生まれて初めて涙を流した。
――――幸せ過ぎる涙を。
――作品を書き終えて――
ここまで『被虐待児の最強転生して優しい家族に囲まれ』を読んで頂き、心より感謝申し上げます。
ここまで実に80万字!読むのも大変だったと思いますが、最後まで読んで頂き嬉しい想いでございます。
作者の初めての作品であり、小説を投稿するきっかけをくれたこの作品は、私の中で最も大切な作品となっております。
初めての作品なのにも関わらず、あまりにも分不相応な多大なる応援をして頂き、連載中、大きな力になりました。
この作品を書き始めた理由も自分が読みたい作品を書きたい!なんて大層な心で書き始めたものの……中々理想通りには行きませんでした。それとまだまだ表現力が足りなかったと痛感しておりました。
それでも面白い、感動した、などのコメントが届く度に嬉しくなり、ついつい寝る時間まで削って書き進めたりしていました。本当に楽しい時間を一緒に過ごしてくださりありがとうございます。
ここまで読んだ読者様は、この作品から何かを感じ取って頂けたでしょうか?
作者本人は書きながら、沢山笑い、沢山泣いたこの作品を読み返すと、人の優しさについて、沢山考えるきっかけになりました。
私自身もそれほど優しい人間ではないのですが、きっと、こうありたいという気持ちがあって、この作品を書き切れたのではないかなと思うと、今からでも遅くないので優しい人間になれるように精進しなくちゃなんて思ってます(笑)
それでは、半年の短い間でしたが、連載中、ずっと応援してくださった読者様皆様に感謝申し上げます。
そして、完結後、この多さの文字を追って頂いた読者様もありがとうございます!
皆様の心に少しでもこの作品が残ったのであれば、ぜひ『おすすめレビュー』に『完結まで読んだ』という言葉と一緒に、その『想い』を残して頂けると、作中のアマテラスお爺ちゃんのように力が増します!
更に宣伝になってしまいますが、作者はカクヨムにて継続して別作品を書き続けていますので、ぜひ別な作品にも遊びに来てくださると嬉しいです!
【2022/2/17】特別SS
https://kakuyomu.jp/users/brainadvice/news/16816927860850631668
被虐待児の最強転生して優しい家族に囲まれ 御峰。 @brainadvice
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