戦国時代のちょっと前、貧しく不毛な土地、東北の小さな国人への転生。

かといって全くノーアドバンテージというわけでもなく。
最初は中途半端な転生もの?と思ったのだけれど
読み進めるとこれが面白い。

自分自身、転生ものを読み始めたころ、
「実際に今の知識レベルで転生させられたら何ができるんだろう?」
と夢想したことがある。
誰でも一度はほんのちょっとはしたことあるのでは?

舞台は戦国が始まるちょっと前の日本。
「転生者」という存在はは主人公以外にも意外と結構存在する模様。
未来(前世)の記憶を持って過去に転生すればオートマチックに
チートでヒャッハーなのかと思いきや、これまた存外難しい。
その知識を開陳することによってその面妖な言動から
多くは妄想狂、変人、奇人等の扱いを受けパージされる。

そんな世の中。

主人公は幸か不幸か、歴史から取り残されたド田舎、現岩手県遠野
へ転生。
そこから始まる立志伝。
主人公本人は、ド田舎へ転生してしまったが故の諦めからか、
「民が食えればそれでいい」程度にしか思っていなかったのだけど・・・

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物語自体が下調べのたまものというほどしっかり調査されているので
地元の人間からしてみても結構リアルっぽい。
リアルというのは、
「ああ、数百年前はこの土地だったら実際そうだったんだろうなあ」
と思わされる。
物語に出てくる実在の峠や山、地形は、今現在でもかなり不便。
仙人峠など、数百年前にふもとに住んでいたら、ここを越えて
内陸に行くなど想像すらしないだろうと思う。
(義経たちはサクッと越えたけど。命がかかっていれば別か・・)

昔祖母から「昔は隣町に嫁ぎさいぐ時ぁ、船でいったもんだ・・・」
と聞いたときは「いつの時代だよ!」と幼心に思ったものだが
何のことはない、昭和初期のこと。
そんな三陸沿岸でのちょっと昔の異世界転生ファンタジー。

隠れた名作!

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