仏教の、とはいっても宗教色はほぼなく、主人公・九条の考え方の元になっている部分として仏教用語が用いられたり、弔いに読経を唱える程度なので身構える必要はないです。
娘のような少女とモフモフ達と信頼できる仲間と共に、飄々と、面倒くさがりではあるけど誠実に、時には死者の魂も救いながらスローライフをあくまで目指そうとする主人公が気に入ってますが、仲間達もしっかり描かれているのでモブはいません。
最初の流れは紹介文の通りではあるけど、読んでみると全然ドロドロしていない。胸糞ないじめからチート能力判明、ざまあ、な成り上がりストーリーに飽きてた身には新鮮で、読み続けてみたところ、ぐんぐん物語に引き込まれてしまい、今では更新が待ち遠しい小説の1つになりました。
無論主人公は色々規格外の能力を持っているけれど、いかに波風立てずにスローライフを送るか、に苦心してるので無双はしない、でも決めるときは決める、そのバランスが気持ちいい。
敵を痛めつける描写や、いかに敵がゲスいかといった描写は最低限な所も好感。いくら敵といえど次から次へ胸糞が現れると読んでてストレス溜まるので。策を用いて追いつめて、最後に解決!となった時の爽快感は独特。
分かりやすくTUEEしたり、ざまあしたりする作品ではないけれど、じっくり純ファンタジーが好きなら読んで損はないクオリティの作品だと思います。
寺の次男坊から導かれる日本人らしい死生観で、異世界のありがちな世界観と相対する日常系。スキルも「寺の次男坊」からいい感じで導出されている。
チートはあるけど「チート無双」ではなく、転生(転移?)した異世界の価値観に仏教っぽい価値観で向き合い葛藤したり、意外と容易く開き直ったりの人々との交流。
いい人も割と容易く死ぬことがあるけど、寺の小坊主の設定がうまく効いて気持ちの整理も描写されるのがいい。生臭坊主キャラが上手く、いい感じで忘れている頃に死霊術士キャラが出るのもいい。
あと、世俗と良心の間を行ったり来たりしている小物感というか、小粋なカオスもお気に入り。「異世界のありがちなヒーロー像」というよりも「日本人あるある」からの演出。
※個人的には5000は超えているべき作品です。ラノベの範疇では燻し銀な作品なので「10000前後」は断言しにくいですけど。
<気になる点>
勇者の少女はいつ勇者になるのか?
<楽しみな点>
話が進むにつれ仲間が増えて行く。
魔王軍誕生はいつか?と勝手に期待しています。