共感を強要しないが故の、より強固な共感

冒頭から徹底して、登場するキャラクターの言動に共感させないようにしているために、本来であれば「異常」にも思えるものであっても、
何か心境が明かされたとき、読者はある種のマインドコントロール的に理解できてしまう。

それは主人公たちがそうであったように読者もまた、主義がいとも容易く、日常の延長線上に転換してしまう可能性が大いにあるのみならず、両極的なものであっても、我々は個性と称して内包しているとも考えられる。

「この世は舞台、人はみな役者」というシェイクスピアの言葉を彷彿とさせ、
対人関係の中で、意識の有無に限らず、我々は自身の立ち位置というものを即座に把握し実践していることがよく分かる物語。