死者が迷い込む危険な場所【黄昏】に飛び込むのはかなりワケありな二人!

 未練を残した死者が迷い込んでしまうという【黄昏】。「黄昏運送」というどう見ても斜陽で怪しい運送会社に勤める千曲川あきおはとある事情から、生者でありながら黄昏と現世を行き来できる特殊能力の持ち主です。

 ある日、亡くなった友人に荷物を届けてほしい、という女子高生の依頼を受けたことから、彼と彼のおかしな後輩の【黄昏】をめぐる事情も変わり始めて——?

 「死者に想いを届ける」というキーワードから、何だか切ないながらもほのぼのしたお話を想像してしまうのですが、あにはからんや、主人公のあきおはともかく、彼の後輩の大曲ななみは口から出まかせばかり。おまけに翌日には自分が言ったことさえ忘れているようで、兎にも角にも掴みどころのない変わった性格です。

 ですが、それにはとある事情があり、そして黄昏もまた、死者がただ迷い込むだけでなく、その姿をグロテスクに変容させてしまう恐ろしい場所であることが明らかになっていきます。

 なぜ迷い込んだ死者は変容してしまうのか。
 そしてあきおとななみ、それぞれの秘密とは。

 女子高生の持ち込んだ依頼を通して、人との関わり、繋がりを保つこと、ひいては生きるということは、何なのかを改めて突き詰めていく二人に、読んでいるこちらも引き込まれ、最後は少しほろっとしてしまいました。

 おかしくて、少し怖い、けれど温かいお話。

 語り口調も軽やかで、十四万字程度と読みやすい長さなので一気読みがおすすめです。

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