主人公のアリス・シュミットは、わけあって学校に行っていない女の子。年齢は定かではありませんが、祖母から勧められた本を読むうちに、図書館で出会った司書が、祖母にも本を紹介していた人と同じ人物だと気づきます——青年に見えるのに。
その年をとらない司書、ルカはそれをとりたてて秘密にしているようでもなく、淡々とアリスにおすすめの本を教えてくれます。とはいえ、秘密を尋ねようとすると決して答えてはくれなそうな雰囲気。アリスは気になりつつも、聡い子供らしく空気を読んで、付かず離れずの距離を保っていきます。
ある日、何やらごとりと重い音のする荷物をもった怪しい男と出会ったことから図書館の中で閉じていた彼女とルカの世界も少しずつ広がっていって——。
子供らしい、というと本人には顔を顰められてしまいそうですが、まっすぐさと好奇心、それに本を扱う時の繊細さや、人との関わり方に垣間見える純粋だけれど複雑な胸の内。彼女の目を通して語られる、大人になってからは忘れてしまっていたようなものの見方にハッとさせられることもしばしばで、何よりルカが勧めてくれる物語がどれも面白そうで読んでみたい——この図書館、本当にあればなあと訪れてみたくなること間違いなしです。
年を取らない司書、うさんくさい壺の持ち主、不思議なアクセサリー店主に、美しい特別な靴を作る職人。謎めいた人々と、物語の中に現れる物語たち。本が好きな子供たちや、かつて子供だった大人たちも引き込まれてしまう、どこか懐かしい、けれど鋭く心に切り込むような物語。
いつまでも読んでいたくなるおすすめの一作です。