第8話 3日目③強面のおっさん

やばい、獣の目だ。頬にも刀傷みたいなものあるし修羅場を潜ってきた重厚感がある。

しかも気配を消し、いつの間にか近づいて来るなんて相当出来る奴に違いない!


(どうする?今の俺では到底敵うまい。逃げるか?潔く戦って死ぬか!30のお姉さんとは言えこのまま見捨ては置けまい)


俺はショートソードの柄にそっと手を添え、立ち上がる姿勢を取った。


「あら?マスター冗談よ。それからダイチ君、30過ぎとは余計なお世話よ。フン」


(やばいメアリーさん超能力者か!?)


「超能力者って何よ!?ダイチ君、さっきから心の中で考えてるつもりのようだけど、どうする?〜30過ぎ〜超能力者か!?まで全部口ずさんでわよ。ほんと全く変な子ね」


「え〜穴が有ったら入りたい」


「この人はここのギルドマスターで私の旦那よ。ダイチ君は初対面よね。私達はここの2階に息子と3人で住んで居て1階がギルドになっているのよ。従業員2人だけだし私は受付兼サブマスターでもあるのよ。エッヘン」


「おい、おい、それよかさっきの2人だけの秘密とは何だ?」

強面こわもてのおっさん事ギルドマスターが口を開いた。

「ああ、あれね、実はゴニョゴニョ」

「インベントリとはそりゃ珍しい。レベルが上がり容量増えれば、騎士団の輜重隊しちょうたいとかにスカウトされるぞ」


「輜重隊って何ですか?」

「軍隊の兵站へいたんとかを運んだり管理する部隊さ。戦争や領地争いが起きると軍隊を派遣して食料とか運ぶだろ?インベントリ持ちなら食料腐らないし、その他荷物も簡単に運べるから重宝するのさ。結構給料高いらしいし生活は安定する。君が頼むなら紹介状書いてもいいぞ」


「う〜ん、遠慮しときます。戦争に巻き込まれて人が沢山死んでいくのを見るのは辛そうだし、冒険者として色々な国を旅したい気が今はします」


「そっか、まあ気が変わったら相談に来な。レアなスキルなんで内緒にしときなよ。それとギルドの横の小屋は訓練所なんで夜10時までなら使っていいからな」

「そうですか、ありがとうございます。早速今日の夜から使わせて頂きます。午後の薬草集めに出掛けるので失礼します」


ギルドを後にし、また先程の森へ向かった。

先程より200m先の草原を横切り森へ向かうと竹林が有った。

竹も色々用途があるかも知れないと思い、5m程の長さの竹に剣を振るった。

流石に斧ではないので剣は少し食い込んだだけ。

今度はスキル斬を使ったらばっさり綺麗に切れた。

もう一度斬を使い半分にして収納。

暇な時になんか作ろっと。


MP少なっかたのを思い出し確認すると残6有ってほっとした。

辺りをしばらく探すと月見草が群生しており20本以上回収。

それから小一時間程探すが見つからないので、村の方へ戻りながら探したら毒ダミ草を10本回収出来た。


そろそろ帰ろうと思い草原に近づくとあいつがいやがった。

「また遭いましたね。我がライバルよ。お相手いたそう」

僕は剣を構え身構える。


今回の白兎野郎は慎重な性格なのか中々攻撃して来ない。

一気に2m程素早く踏み込み剣を振り下ろすが、後ろにピョンと跳ねて躱された。

右にじりじり回り死角を狙うがまた躱された。


こうなったらあれだ。殺気込め全身に気を集中して「掛かって来いや〜」と大声を張り上げ恫喝した。

白兎は一瞬としたがニャって笑う。


その瞬間俺のぷりケツに激痛が走る。

後ろに身体を捻ると、何と俺のぷりケツに白兎の角が突き刺さりジタバタしていた。


「おのれ分身の術か!?」


咄嗟に右手で剣を振り回すが、後ろの白兎野郎に上手く剣が当たらない。

今度は右足の脛に痛みが走る。

白兎野郎にドロップキックを噛まされていた。

「一体どう言う事だ。白兎野郎はケツに刺さったままの筈なのに!?」


俺は混乱しながら円を描くようにクルクル回り剣を振るう。

クルクル回ったお陰でケツの兎が取れた。


クルクル回転したせいか目が回り兎野郎が二重に、いや三重に見える。


やばいと思ったが、一気にジャンプして襲い掛かって来た。

俺は剣を右下段に下げて半円を描くように「ザ、ザザザ、ザーン」と無我夢中で振り回した。


(タタタ、タラッタラターン)

心地良いメロディが大脳を刺激した。


辺りを見廻すと3羽の一角兎が真っ赤に染まり息絶えていた。

「ふー」と大きな溜息を漏らす。

ステータスオープン


ダイチ・クゼ  15才  Lv2→up

職業 冒険者【Z】

HP 35/35 +5up

MP 16/25 +5

攻撃力 14 +4

防御力 14 +4

魔攻撃 06 +1

魔防御 06 +1

敏捷性 13 +3

耐久力 13 +3

運   12 +2

剣術 Lv1斬

土魔法Lv1 ウォール ホール

生活魔法 クリーン ライト

EXスキル インベントリLv1


念願のレベルアップとステータスも軒並み1〜5増えた。

ん?HP全回復にMPも多少回復しているのはレベルアップの恩恵か!?


あれ?3羽も居たのはひょっとして最初1羽だったのに、俺が大声出して近くの仲間を2羽を呼び寄せてしまったとかかな!?

今度から気を付けないとね。


一角兎3羽をインベントリに回収して、村への帰り道をスキップしながら速足で帰った。







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