第11話 左利き
いやぁ〜調子に乗り過ぎた。
どぼとぼ歩いて村に戻って肉屋さんに直行。
「お、おかえり〜。今日はどうだった?」
「はい、これ。先ずは一角兎4羽。続いて八面鳥2羽」
「八面鳥2羽も仕留めたのか。凄いぞ。重さ測らないと金額出せないからちょっと待ってな」
しばらくして「10kgと12kgだったよ。全部買い取りにする?」
「今日も一角兎1羽分は下さい」
「あいよ、これ伝票ね」
ギルドに戻り換金する
「薬草合わせて20本で3200ギル、一角兎4羽の1羽肉引き取りで5800ギル、八面鳥10kgと12kgが6000と7200で討伐2000の15,200ギル、全部合わせて24,200の税金引いて21,780ギルよ」
「はい、それでお願いします」
「今日は随分儲かったわよね。おめでとう」
「いや、運が良かっただけですよ。八面鳥倒せたのはラッキーでしたし、おまけにレベルアップまでしちゃいました。テヘ」
「おめでとうダイチ君。八面鳥は元々村で飼育してた人が居たけど、嵐で鶏舎が壊れた時に逃げて野生化しちゃったのよ。上手く繁殖してるようだから適度に狩って食料にしているの。狩り過ぎて数が減るようなら制限させるけど、まだ100羽以上居ると思うので倒していいわよ」
「ねえ、今日は時間ある?あるならお茶でも淹れるから、そこのテーブルに座りなさい」
「後は訓練所で体力作りするだけなんで時間は有ります」
10分程待つと二階からお湯を入れて茶葉がクルクル踊っているポットを持って下りて来た。
ひっくり返した砂時計が落ちるのをゆっくり眺める。
「はい、良いわよ。ミルクは入れる?」
「はい、お願いします。茶葉の香りがたちミルクが味を円やかにして美味しいです」
「そう、ありがとうね。ダイチ君雪見草って分かる?」
「ちょっと待ってください」インベントリから本を出し植物図鑑のページを捲る。
「あ、この白い花のやつですね」
「そう、それね。麻痺を治すポーションの原料なんだけど、最近あまり見つからなくて困ってるのよ。薬草探ししている時に見つけたら持って来てくれない?」
「見つかるかどうか分かりませんが、次いでに探してみます」
「普段一本150ギルだけど200ギルで引き取るわ。因みにその反対のページにあるのが痺れ草で、食べたりすると身体が痺れて10分くらい動き辛くなるのよ。まぁ自然回復もするけど魔物に襲われた時には致命傷になる事もあるわ」
「こういうのって耐性は出来るんですか?」
「私はやった事ないけど、毒や麻痺は何度も受けると耐性がつき易いって聞いた事有るけど、わざわざ痺れ草食べて実験する人は居るかな!?クス」
「確かにそんな物好きは居ないかもね!?話し変わりますが、MPは自然回復するんですか?」
「レベル9までは個人差はあるけど1時間で1〜3ぐらい、6時間睡眠取ると全回復、寝なくても12時間で全回復すると言われてるわ。ただレベル10を超えるともう少し時間掛かるの。だからレベル高い冒険者は多少高価でもMPポーションも持ってるわ。一番易い初級ポーションでも5000〜6000ギルするわ」
「結構お高いですね。」
「因みにうちでも10本在庫あるけど5000ギルよ。一本如何?」
「今はお金の余裕ないので遠慮しときます。
HPは自然回復するんですか?」
「HPもMPと同じぐらいで回復するんだけど、怪我をしている場合は違うの。擦り傷ぐらいなら関係ないけど、ざっくり斬られたり大怪我すると、そっちの治癒に回復が回されて殆どHPは自然回復しないわ。ポーションや魔法で治癒しても、先ずは傷口の治癒が優先されてHPの回復量は通常より減るわ。だからHPがある程度減ったらポーションや魔法で回復して置かないと、強い魔物に襲われた時に死ぬ確率が高くなるのよ」
「それじゃ回復魔法使えない人はポーション2〜3本常備した方が良さそうですね」
「そう、その通りよ。あなた一本しか持ってないんでしょ!?」
「分かりましたよ。2本下さい」
「毎度あり〜5000ギル頂きま〜す」
「そうだ、訓練所の木剣や弓って使っても良いんですか?」
「ギルドの訓練用備品だから、もっちの論いいわよ。ただ壊した場合は半額弁償ね。置いてある木剣や弓は2000ギル程度だから弁償金は1000ギル程度かな!?」
「それじゃ弓も練習しようかな。野兎は直ぐに逃げるし、八面鳥も弓なら遠くから攻撃出来ますからね」
「うちの村の狩人達も弓使っているわ。さっき話した痺れ草を溶かして矢尻に塗るの。
痺れ草は時間が経つと効果か消えるのでお肉に問題は無し。でも毒を塗るとその肉の周辺切り取らないといけないのよ。それから野兎は逃げ足速いから罠か攻撃魔法で狩るの。夕方穴の出入り口に何ヵ所か籠を仕掛けて朝回収に行くとかね」
「そっか、罠か魔法ですか。道理で全然捕まえられずくたびれ儲けだった訳だ。18時過ぎたんでそろそろ訓練所行きます。紅茶美味しかったです。ありがとう」
一旦ギルドを出て肉屋で肉を回収して訓練所に入った。
今日も先ずは腕立て伏せ、腹筋、反復横跳び30回を3セット。次に弓を取り出して練習してみた。7m10m13mにラインが引いて有り10mで練習する事にした。
的は雑草の様な物を直径1mに束ねて丸くなっていた。
手に取った備品は1.2m程の長さなので多分短弓だろう!?
左足を前、右足は後ろで左手で弓を持ち、右手で弦を引き、矢を引き放つ。
〈ビョョョ〜ン〉
全然勢いないし矢が的まで飛ばない。
とりあえず矢を放つのはやめて、構えと弦を引く練習だけしてみる事にした。
10回程練習したがしっくりこないので水を飲んで休憩する。
何か俺って重要な事を忘れている気がする。
座禅を組み、ヘソの辺りで印を組む。
…… 字を書くのは右手、剣を構えるも右手が前、ご飯の時にスプーンやフォークを持つのは左手、タガーナイフで薬草切る時も左手、鉈を使って枝切りした時も左手だったはず!?……
ピーンときた。俺ってば両刀使い!?
いや、その言い方勘違いされる気がする!?
そう、両手使いなんだ!
記憶が混濁して無意識に両手使ってたから忘れていた。
小さい頃、絵や字を左手で書いてたら誰かに矯正されたような気がする!?
それで絵や字を書く時だけ右手にしたんだきっと。
立ち上がり、今度は右足前、左足後ろで右手で弓を持って弦を左手で引いた。
〈ビョン、ビョビョーン!〉
お、さっきより力が入って引き易いし勢いがある。
20回程練習したら弦を持った左手が痛い。
「お前、変わった事してんな」
いきなり背後から声かけられてビクンとした。
「マスターですか。脅かさないで下さいよ。気配消して近づいて来るからびっくりしますよ」
「おぅ、悪かったな。メアリーから弓の練習してるから見て上げてって頼まれたのさ。そしたら、ゆがけも付けないし左利きで練習してるからびっくらこいてね」
「いやぁ、なんか僕は左利きだったのを突然思い出しまして。それとゆがけって何ですか?」
「弦を引く方につけるグローブみたいなもんさ。引く力も強くなるし指先も痛くならないよ。流石に左利き用はうちには置いて無いけどな。剣士も左手前に剣を握る人、見た事ないだろ?あれも左利きは矯正されるんだ」
「え?あれも左利きは矯正ですか!それじゃ僕もそうだったかも知れない」
「それじゃ苦労したかもしれんな。弓の手本見せるから見ててご覧」
マスターは10本10mの距離から射ったが、ほぼ真ん中近くに中った。流石に射形が綺麗で参考になる。
しばらく射形を見て貰いアドバイスを頂いた。
結構話しが長くなり、剣の素振りを忘れて宿屋に帰った。
残金36,460ギル。
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