第13話 事件後

お昼近くになりお腹が空いたので、肉屋さんに行った。

「いらっしゃい。今日はもう仕事終わったの?」

「いや、それが色々あって午後から行こう思いまして。その前に腹ごしらえをと思いまして寄りました」

「今日はお勧めがあるよ。普段ならとっくに売り切れてるだが、今日は朝なんか騒ぎが有ったらしく、お客さんまだ来てないんだ」


ギクッ、ちょっと冷や汗が出た。


「これが昨日ダイチ君が仕留めた八面鳥のローストチキン。朝からじっくり窯で時間掛けて少し前に出来たばかりのホッカホカだよ。特にこのモモの所が美味いよ。一本1200ギル」


凄い300gはありそうな大きなモモ足で、美味そうな匂いが鼻腔を擽る。でも小腹が空いた時に食べる保存食の干し肉も欲しい。でも昨日レベルアップと稼ぎが良かったから、自分にご褒美だ。

「干し肉あったら下さい。それとそのモモ肉2本も」

「一角兎の干し肉が1000ギル、モモ肉2本で2400ギル、合計で3400ギルだ。毎度あり」


ギルドに戻り丸いテーブルを借りて食事休憩。

「あ、それ昨日の八面鳥のローストチキンじゃない。それ美味しいんだよね。今日の夕飯用に買いに行かなっくっちゃ」

「あ、メアリーさんモモ肉はこれで売り切れでしたよ」


「そうよね、あれは直ぐ売れちゃうから仕方ない。まあでも他の部位でも良いわ。ちょっと買ってくるから留守番しててよ」

「は〜い」

何これ、うっま。皮の部分はカリカリで噛めば噛む程肉汁がジュワっと溢れ出す。甘辛いタレも絶妙であっという間に平げてしまった。


メアリーさんがニコニコ顔で大きなお皿を抱えて戻って来たので、薬草取りに出かけた。

雪見草も頼まれて居たし、今日は昨日より500m先を探してみるかな。


草原を歩いてると野兎を何羽か見かけたが、やるだけ無駄なんで無視した。

森に入りB層に入ると月見草と毒ダミ草は何本か採取出来たが、雪見草らしき物は見つからない。


八面鳥を1羽発見。土遁を4連発したが逃げられてしまった。昨日はやっぱり運が良かっただけか!?もっと八面鳥の前に正確に壁が出来るように訓練しないといけないな。


もう少し奥に進むと白い花が咲いていて、月見草と違う感じだ。これが雪見草か!?割と群生していたので数十本回収した。

その後も辺りを探したが、見つかったのは月見草や毒ダミ草ばかりだった。

村に帰る事にしてトボトボ歩いてると、一角兎に何度か襲われ4羽倒してギルドに戻った。


「お疲れ様。雪見草見つかった?」

「それらしき物を数10本見つけたので鑑定お願いします」

「こっちが雪見草で14本、こっちが痺れ草で22本、後は雑草ね。10本単位だから雪見草10本だけ買い取りになるわ」


「中々見分けるの難しいですね。あと、月見草と毒ダミ草もあるのでお願いします」

「月見草と毒ダミ草が20本ずつで6400ギル、雪見草10本で2000ギル、一角兎4羽で6800ギルで合計15,200の税金引いて13,680ギルでOK?」

「はい、それでOKです」


精算すませると、メアリーさんが少し見せたい物があるから着いてきてと言われた。

「マスター、ダイチ君あそこに案内するから、お店番お願いね」

2階からマスターが下りてきて「あいよ」と言ってカウンターに座った。


ギルドを出て真っ直ぐ進み、村長宅を右に曲がって突き当たりの牧場に着いた。

「ここは村の東側なんだけど、来た事ある?」

「ここに牧場があるのは知ってましたけど、この先は知りません」

牧場を横切り木の扉を開けると、広大な畑が有った。


「うわ〜すっごく広くて運動競技とか出来そうですね」

「この柵を見て貰うと分かるんだけど、だいぶ痛んでいるでしょ?番犬が居るから被害は少ないが、たまに野兎に荒らされたり作物を食べられたりするの。ここは村中の人達が使っている共同農場なんだけど、相談を受けてたのよ。あなた土魔法使えるし、あんな馬鹿やる程エネルギー余ってるなら、バイト代出すからここ一面に土壁の塀を造ってくれないかしら?」


「えー、こんな広い場所やったら何十日、いや何ヶ月掛かるか分かりませんよ。ぜ〜たっい、嫌です」


「まあまあ、そんなに直ぐに答えを出さなくてもいいから考えなさいよ。一日2000ギル出すからさぁ」


「いや無理です。体力つけなきゃいけないし、弓や剣の練習もしなきゃいけない。正直時間が足りないくらいです。MP切れで狩りの心配すら有ります。それに一日2000ギルなんて安過ぎますよ」


「そう?でも例えば朝起きて半分くらいMP使っても午後には回復しない?夕方ギルドに戻って来てからMPギリギリまで使っても、翌朝には全快してるでしょ」

「そりゃそうでしょうが、嫌です」


「分かったわ。3000ギル出すわ。途中でリタイアしても良いからやってみない?村人皆んなに感謝されると思うわよ」


これ以上話すと説得されそうなので、「メアリーさんあの辺りピカって光りませんでした?ほらあそこ」隙をついて走って逃げた。


「チッ、まだ訓練所があるさ、ヒヒヒ」

今日の事件の後始末が遅れると不利になりそうなので、村の入り口の土壁や穴はディスペルで速攻で直し、訓練所はやばいので訓練はサボり宿屋に戻って食事をした。


「あら?今日は随分早いお帰りね」

インベントリに収納してあって忘れていた一角兎の肉の事を思い出した。

「今日はちょっと疲れたんで。これ僕が仕留めたんですが、どうぞ。日頃良くして貰っているお礼です」

「あら、ありがとうね。牛乳もう一杯サービスするわね。ふふふ」


部屋に戻り、今日はそんなに疲れてないし、ステータスでも確認するか。


ダイチ・クゼ  15才  Lv3

職業 冒険者【Z】

HP40/40

MP 12/30

攻撃力 17

防御力 17

魔攻撃 09

魔防御 07

敏捷性 15

耐久力 16

運   14

剣術 Lv1斬

土魔法Lv1 土遁→new ホール

生活魔法 クリーン ライト ヒート→new

EXスキル インベントリLv1


おっと、ウォールが消えて土遁になってる。

発音間違い易いから助かったわ。

ん?詠唱が変化したって事は何でも良いのか?本人のイメージと魔法が合致すれば良いのかもね!?

あれ?生活魔法にヒートがあるじゃん。

「ヒート」やっぱり温かい。

あれ?指輪はめても半年以上は掛かるって言われたのにね。

イグナイトは覚えてないが、お金が無いので11万ギル節約出来たのは嬉しいなぁ。


どれ、今日は時間も有るし

【冒険者 初級編】の本でも読むか。

ペラペラとページを捲っていると、船を漕ぎ出した。

残金 約40,000ギル。


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