概要
花が咲く、と祖父は言っていた。
その場に、その空気に。厳かにして密やかな、誰にも手折られてはいけない花が。
ひとたび風が吹けば、新緑の髪がはらはらと揺れて視界いっぱいに広がった。日が傾くころには、紅みを帯びた光が照って色味が変わる。オアシスでたまに採れる、真白い石の様な肌はいつだって一切の曇りを見せない。
花が咲いていた。
その場にあることが当たり前であるように。
一度も考えたことがなかった。
その花がどうしたいのか。ずっとそこに居続けるものなのか。渡り鳥のように、どこかに行ってしまうことはないのか。
思い込んでいた。
彼の人は、ここを見捨てることなぞないと。
ずっとずっと、乾いたこの地に咲いているのだと。
それはある砂漠の村に住む、食事係の少年と、あるカミサマみたいな人の話。
その場に、その空気に。厳かにして密やかな、誰にも手折られてはいけない花が。
ひとたび風が吹けば、新緑の髪がはらはらと揺れて視界いっぱいに広がった。日が傾くころには、紅みを帯びた光が照って色味が変わる。オアシスでたまに採れる、真白い石の様な肌はいつだって一切の曇りを見せない。
花が咲いていた。
その場にあることが当たり前であるように。
一度も考えたことがなかった。
その花がどうしたいのか。ずっとそこに居続けるものなのか。渡り鳥のように、どこかに行ってしまうことはないのか。
思い込んでいた。
彼の人は、ここを見捨てることなぞないと。
ずっとずっと、乾いたこの地に咲いているのだと。
それはある砂漠の村に住む、食事係の少年と、あるカミサマみたいな人の話。
おすすめレビュー
書かれたレビューはまだありません
この小説の魅力を、あなたの言葉で伝えてみませんか?