これは……なんでしょうね、この真綿で首を絞められるような、胸が苦しくなるような、圧迫感のある怖さ。携帯の使えない、山奥の古い洋館、っていうシチュエーションもヤバい感じなんですが、医療器具の描写とか介護の動作の描写が、すごくきっちり描かれているのが、また怖い感じを増してきます。
回を追うごとに怖さが増してくるので、それに比例して読めるエピソード数が減って来て、ビビりな私は、今(=25話あたり)は一度に一エピソード読むのがギリです。でも、続きが気になるので、読むのを止めようとは思いません。
8/16完結したので補足
最後の方はもう、「早く続きが読みたい」って気持ちが勝っていました。本当に面白かったです。今、読み終えてすっごい充足感に満たされています。
面白かったです!
今までに読んだ、どの投稿小説よりも、群を抜いてレベルが高く、どちらかと言えば商業小説よりの作品だと思っていました。
(2022.3/26)角川出版から書籍化のお話が上がっているそうで、そのときも、この作品のレベルの高さから、嬉しさこそあれ、そこまでの驚きはなかったですね。
内容はとても緻密で、場面の様子から人物の心理描写まで、現実にアリアリと描かれています。
ここが、この作品を読む上での非常な安心感と、読者としての信頼に繋がっていきました。
ひとえに作者さまの小説への意気込みが伝わってきます。
不気味ですが、読み応えあり、物語としても単行本一冊を手軽に読む感覚で、楽しめる作品でありました。
看護師から介護サービスの仕事に転職した栗谷茜。当初は訪問介護の仕事だと思われていたが、妙にアットホームな雰囲気を出す会社から言い渡された仕事内容は、住み込みでの介護だった。
勤務先となるのは携帯の電波も届かない山奥にある洋館。そこの主人である宮園妃倭子という女性を介護することになるのだが、彼女の介護をする際には絶対に守らなければいけない奇妙なルールがあった。それは……彼女の顔を絶対に見てはならないこと……。
顔を見せてはならないということで妃倭子は黒い袋を被せられており、こちらの言葉には一切反応せず、さらに食事は漏斗を使って口の中に生肉のミンチを流し込む……。明らかに異常な光景なのだが、この状況を当たり前のように受け入れているヘルパーたちも明らかにどうかしているし、さらに何やら秘密を隠している。当然茜の不安は募るばかりなのだが、屋敷の中では徐々に異変が起き始め……。
本作の素晴らしい点は、屋敷の主人の病状や彼女への介護の様子など、ひとつひとつの描写がとてもきめ細かいこと。描写の説得力が全体のリアリティの強度を高め、読んでいていろいろな意味で気分が悪くなってしまう。しかしそれでも先が気になって続きが読みたくなるからますますたちが悪い。
万人にオススメできる作品とは決して言えない。でも、こういうホラーが大好きな人、いるでしょう?
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)