心に音を響かせろ! 音響は想いを届ける仕事

音響会社でバイトすることになったバンドマンの大学生・孝志は、音響の大ベテランの社長に、どうすれば上手くなるのかと問いかける。

 音響として多くのバンドを見てきた社長はこう答える。「上手く歌う必要があるのか?」と。

 ヴォーカルは言葉で直接表現できる楽器。一番大事なことはカッコつけた歌い方ではなく歌詞を伝えること。ヴォーカルが聴き手にメッセージを伝えられなかったら音楽は完成しないのだと説きます。

 この言葉はすべての創作活動に通じる心構えだと深く感銘を受けました。

 小説でもカッコいい物語、カッコいい主人公を書く技術ばかりに注力して、作品にどんなメッセージを込めるか、どうやって読者の心に届けるか、言葉から想いが抜けてしまっては読者の心に響く感動は生まれません。

 カッコつけてバンドをやって女の子にモテるイケメンよりも、この作品の主人公のように女にフラれても自分の音楽を追求していく姿に憧れます。

 音響は裏方だが、音響がいなければライブはできない。誇りをもって音響をやる社長の信念に自分もそうありたいと思わされました。


(音楽を題材にした作品特集/文=愛咲 優詩)