エピローグ!

大規模な人間達の侵攻は失敗に終わり、攻めている間に、主要な城や砦を破壊された人間達の王族や貴族は肩身の狭い暮らしを強いられた。


住む場所がなく、空いていた平民の家で暮らさないといけなくなったからだ。

贅沢な暮らしに慣れていた王公貴族達は、平民に命令して、急いで城や屋敷を作るよう命じたが、働き手の亜人達が居なくなって、自分達で農作業や鍛冶をしなければならなくなった平民に、そのような余裕がなく、各地で暴動が起こり、多くの王公貴族達が平民に殺された。


これにより、生き残ったお金も武力もない王公貴族達は大人しくなり、自分達も働くようになったのである。



そして数十年が過ぎた──


人間達の大陸は人間同士の戦争もあり、かつて7ヵ国あった内、4ヵ国まで減っていたが、ようやく国内の情勢は落ち着きを取り戻していた。一時は盗賊や魔物が多く出没し、家から出られないほど荒んだが、ここでシオンが一役買ったのである。


シオンは街や村を襲う盗賊や魔物を亜人達を使い助けて行ったのである。

最初は驚き、戸惑う人間達だったが、統率の取れた魔王軍は、市民に危害を加えることはなく立ち去るため、数年も経った時には歓迎される存在となっていた。


こうして、魔王シオンの涙ぐましい努力は実を結び、数十年経って正式に人間達との交流をすることになったのである。


まだ過去の事を覚えている者もいたが、この辛い数十年に比べたら、暮らしを良くしてくれる魔王には文句を言う者は居なかった。

逆に、小さな子供達は街や村を救って後、すぐに転移門で消えてしまう魔王軍を英雄のように見る者が多かった。



そして──


『魔王シオン、この度は私の管理する世界を正して頂きありがとうございました』


「あれ?女神様?ご無沙汰しております。ってか、酷いじゃないですかー!魔王の娘に転生なんて聞いてませんでしたよ!?」


『ごめんなさい。詳しく説明すると断られると思って。でも、シオンはやってくれました。本当に感謝しています』


「まぁ、苦労したからね!」


『そうですね。私は弱い人間を守るために勇者をそのつど召喚して送り込みましたが、魔王側がどうして人間国を狙うのか考えていませんでした。他の異世界と同様に、それが当たり前だと思っていたからです。でもそれが人間を増長させて、人間が【人間の皮を被った悪魔】となってしまいました。これは私の罪です』


「そんなに自分を悲観しなくても良いじゃないですか?少なくとも、私は戸惑いましたが、今は感謝してますよ?」


ちょうどシオンの個人部屋の扉が開き、誰か入ってきた。


「おかあさま、えほんよんでー」

「ずるい!わたしもよんでほしいのー」


双子の姉妹が入ってきた。


「あらあら、良いわよ。二人とも好きな絵本読んであげるから」


そう、シオンの子供である。


『………シオン本当にありがとう。お幸せに』


女神の声はそれっきり聞こえなくなった。


「女神様、ここに連れてきてくれてこちらこそありがとう」


姉妹はシオンの言葉に首を傾げた。


「ごめんなさいね。さぁ、どんな絵本を読んで欲しいの?」


姉妹は一緒に読んで欲しい絵本をシオンに差し出した。


「えっと、なんの絵本かしら?」


姉妹が差し出した絵本のタイトルはこう書かれていた。



【異世界転生したら、人間を滅ぼす魔王の娘に転生しました。】




END



最後までお読み頂きありがとうございました!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転生したら、人間を滅ぼす魔王の娘に転生しました。 naturalsoft @naturalsoft

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ