新たなる世界!

皇帝は魔王の真意を問い掛けた。


「私はただ歪んだ世界の常識を元に戻したかっただけです。亜人達と人間が対等な立場で、手を取り合って暮らしていく世界を。………そこに、魔族が加わることができればいいと思っています」


バースト皇帝は驚愕した。今までの魔王とは考え方がまるで違ったからだ。


「確かに、今までの魔王は豊かな大地を求めて人間の大陸を狙いました。しかし私は、女神様から、瘴気を無効化する力を頂き、この魔大陸を豊かな土地へと変えることができました。正直、人間の国を狙う意味がないのです」


シオンの言葉に周囲の者達は静かに聞いていた。


「しかし、かつては手を取り合い我々魔族を撃退した亜人達を奴隷にして好き勝手している人間を見て考えが『少し』変わりました。女神様が人間を滅ぼせと言った意味がわかりました。傲慢になった人間に罰を与えるという所では、女神様と私の考えは一致しました」


シオンは一呼吸置いてから続けた。


「あなたは……、あなた方は知っていたのですか?奴隷となり、人間達の性のはけ口になった亜人達の末路を」


「そういう者が居たという事は聞いている」


皇帝は一言そう言ったが──


「そう………少なくとも『あなた』はそういう事をしてはいないのね。でも本当には知っていないようね。私の怒りと悲しみを知りなさい!そして女神様がどうして人間を滅ぼせと、私に依頼したのかを!」


シオンは初めて人間の大陸へ来た時の奴隷収容所の映像をまた脳内で見せた。


「そ、そんな………バカな………」

「に、人間のする諸行ではない………」


一線を退いていた皇帝と将軍は力なく座り込んだ。


「これは紛れもない事実よ。兵士の中にはこの事を知っている者が結構いるようだけどね」


皇帝は信じられないという顔で振り返った。何人かの兵士が目を剃らした。そういうことなのだろう。


「ふ………ふははははっ!どうしてここまで亜人達に憎まれるとは………まさか、人間が悪魔になっていたとは、知らなかったでは済まされぬな!」


から笑いする皇帝が言った。


「謝ってすむ訳ではないが謝罪させて欲しい。すまなかった!」


皇帝はあぐらを描いて、深く頭を下げた。帝国では最上位の謝罪である。


「謝罪は受け取りましょう。さて、私の目的は先ほど言った通りです。人間の大陸から亜人達を全て撤収させて、数十年の期間を設けます。1度、人間と亜人の関係を完全にリセットさせます。その後、少しずつ交流を計り良い関係を気付ければと思っています」


「そこまで考えていたとは…………こちらからは何も言うまい。最後にワシのお願いを聞いて欲しいのじゃが?」

「どうぞ」


「感謝する。ワシの首でここにいる者達を帰してやる事はできぬか?」

「では、私もお願い致します。皇帝と私は、ここにいる最高責任者です。どうぞ、私の首もお受け取りください」


シオンは軽くため息を付くと二人に伝えた。


「要りませんよ。首なんて。それより、ここで平民として暮らすか、故郷に帰るか決めて下さい」

「ワシらを帰すと言うのか!?」


驚いた声を上げた。


「先に言っておきます。これから人間の大陸は大変な困難に見舞われるでしょう。トップが戻っても、城や屋敷、財産などほとんどない状態で、どうやって国を運営していくのか?恐らく、盗賊が増えて国が乱れるでしょう。中には他国へ攻め込む国も出るかも知れません。ここに残れば、最低限の生活を保証しましょう!」


シオンの言葉に、兵士達はしばらく話し合い、5千の兵のうち、3千ほどが残る事を希望した。







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