主な登場人物(?)たる妖達への深い愛情と、同族たる人間への飽くなき絶望と、奇縁を持つ仲間を頼る主人公の回生の物語。
敢えて主人公の発言を省き、私情を晒すことで臨場感を演出する技法は語りの雰囲気を盛り立てています。ステータスや経験値といったゲーム要素を表に出さず、あくまでも困難な状況に陥った個人の苦悩というスタンスを崩さない姿勢も好感を持てます。
願わくば主人公に、人間(過去・歴史)もまた全体悪だけではなく、個別の属性から郷愁の念も持てる日が来ることを願いつつ。
私信:連載2周年おめでとうございます。このような手段でしか応援出来ませんが、いつも更新を楽しみにしています。
創作は義務ではなく作者の想像力に依ると理解しているので、無理せず伸び伸びと暴れ廻ってください!
はい、ゴールデンウィークの内、土曜日はこの作品の尊い犠牲になりました。
もう、取り敢えず読んで欲しいです。
読んで後悔する事は無い筈なので。
話数が多い?
500越えとなるとそう言う方もいると思いますが、読めば分かります。
500越えもあって良かった!
っていうか足りないかもしれない!
……と。(下の足りない、と言うのは私が要求しすぎなのかも知れませんが……)
是非とも、この作品の不思議で暖かくて面妖な、けれど時に闇鍋のような不安感と独特の言い表せない雰囲気の漂う……そんな妖怪の世界を味わって下さい。
追記: ……あと、とんでもない飯テロをされる可能性があるので、読む際には艶々ホカホカの白米を炊いておく事をオススメします!
題記は皮肉や遠回しな嫌味ではなく、なろう系を読みすぎると忘れがちになる普通の基準を思い出させてくれるという意味であると伝えたい。
昨今のなろう系は「中世ヨーロッパをイメージしてほしい」の一言で場面描写を読者側のイメージに任せて具体的な描写を省略している中、この作品は和風ファンタジーというイメージの下地はあるものの読んだ内容で場面がイメージできるほど描写がしっかりしている。
登場人物の心情の描写や主人公への態度の移り変わりについても筋道をつけて「そういう設定のNPC」というよりも「一人の登場人物」として共感しやすい。
星の数から大衆受けはしていないのかもしれないけれど、個人的には作品のスタイルや面白さについてはかなり好感触。
実に素晴らしい物語。一気読みするとその素晴らしさが伝わると思う。
まず何より、昨今の異世界転生や異世界転移のような、安易なチートというのが存在していない。作者様が書いている通り、レベルやスキルなども全く存在せず、確かに食感気味な方にとってこれほどまでに合う小説など存在しないだろう。
主人公の手の内にあるチートと言えば、その存在すら何かも分からぬ一枚の板と、それらで得られる様々な機能の結果のみ。それすらポイントなる何かしらを消費する事で使え、中々増えてはくれない。
そも、チートを使いたい時にポイントが足りずに使えないこともあるし、主人公は人間なので死ぬ時は死ぬし、怪我する時は相応の怪我をする。
こういう些細な描写などに、主人公から『一般人』という片鱗を感じ取れるのだ。それがまた主人公への共感を生み、自分と重ねてしまうような原因となっている。
そして世界観。これも実に素晴らしい。世界観が特に作り込まれている、としか言いようがない程に。ある程度読み進めていけばこの意味が分かるだろう。是非読んでみてほしい。
それからキャラクター1人1人の口調、性格、裏事情から何から何まで、それら全てが物語の節々に滲み出るような文章。これがまた味なのだ。
読めば読むほど味がして、このキャラクターはどのようなキャラクターなのだろうか?どのような過去を持ち、どのような性格をしているのか?など、全てのキャラクターがそういった期待を唆る。
とまぁ、ここまで書いてきたが、一番伝えたいのは初めに書いた通り。一気読みをすべき、という所。
物語として完成されているのだ。素人判断ではあるが、それでも完成していると、私はそう思ってしまう。ならばもう、一つの区切りであると感じるまで読み進めてみるべきだろう。区切りごとに主人公が活躍していくのも、見ていて飽きない。
是非、これを読んだ皆様にも読んでもらいたい。