エピローグ


 目を覚ました。

 時計を見ると、起床時間の数分前だった。

 ここ最近、毎夜悪夢に苛まれていたことが嘘みたいに寝覚めがいい。

 今日からまた出勤だ。憑き物が堕ちたみたいにすっきりした気分で支度をする。


 背伸びをしながらリビングに降りる。

 父は新聞を読んでいる。僕を殴ったことについては反省しているのか、気まずそうにしているのがちょっと面白い。

 ユメは教育番組を見ていた。テレビの人形と一緒にダンスしているが、上手く踊れないのかステップがぎこちない。そこもまた可愛い。

 母はキッチンで朝ごはんを作っている。お弁当まで作ってくれて、本当にありがたいなあと思う。

 僕が「おはよう」と言うと、母も父もユメも僕の方を向いて挨拶を返してくれる。


「おはよう」

 視界の端でひとまとめにした髪が揺れる。

 アカリが僕の隣に立っていた。

 幼さが残る笑みを浮かべている。


 母がいて、父がいて、ユメがいて、アカリがいる。

 僕は幸せだなあと思う。

 この幸せを続けていけるように、今日も一日頑張ろうと思った。

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南柯の夢は月明かりの下 ぷにばら @Punibara

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