高校生の望月亮が所属する地学研究部。活動内容は何にもなく、先輩である糺谷唯とただダラダラ部室で漫画を読んだり、おしゃべりをしたりするだけ。そんな二人の他愛ない日常が描かれる日常系な作品なのだが、ある日地球に小惑星が落ちてくるニュースが流れて来て……。
惑星衝突で人類滅亡の危機。数多のフィクションで描かれてきた内容だが、本作の場合、そこでの起きる劇的な変化を描くわけではなく、少しずつ確実に変わっていく世の中の変化を二人の会話を通じて描き出していくのが面白い。
地球に小惑星が落ちてくるというニュースを耳にして、最初にやることが二人で『アルマゲドン』を鑑賞するというのもおかしいし、人類最後の日に二人で見晴らしのいい土地へ落ちてくる星を眺めにゆるい感じで旅行に行くというのも小気味よい。
世界の終りと対比して描かれる高校生二人の日常生活。二人の決断が世界を救う……なんてことはないのだけど、抗えない運命に対してそれでも変わらずにいようとする二人の会話がじんわり心に沁みて来る作品に仕上がっている。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)
ちょっぴり個性的な先輩の女子と、どちらかといえばツッコミ気質の後輩男子が、ふたりっきりの部活でだべりながら過ごす青春のお話。
からの、ある日唐突に訪れる「終わり」の物語。
終末もののSFであり、真正面から青春と恋愛を描いたお話です。いやもう、ちょっと圧倒されて何も言葉が出ない……とにかく最後の最後、クライマックスの盛り上がりがすごすぎて。普通に泣きました。あれは反則……。
とはいえ、実のところ反則と言えるような手段はなにひとつなく、どこまでもまっすぐ描かれた作品です。細かい表現や構成に気を使いはしても、物語そのものはものすごく素直。搦め手や飛び道具に頼らないからこそ出せる破壊力なんですけど、これ相当な力がないとできない芸当だと思います。こちらからすれば、「コースもタイミングも全部わかってるのに打てない球」みたいな。だからこその威力。
終盤、世界が不穏になってからの、一旦先輩と離れている間の描写が好き。単純に落差が効いた、というのもあるのですけど、苦しい・厳しい物事を描く際の手触りに垣間見える、何か〝物語に対して嘘のない姿勢〟のようなものが最高に沁みます。
きっと都合のいい奇跡は起こらなくて、だからこそ、彼と彼女が成そうとしている何かが尊く思える。魂の震えるようなその冒険を、文字を通して共有できる。結びの潔さも含めて、とてもとても綺麗な物語でした。ほんとよかった……!
半年かけて糺谷先輩と望月君の関係を露わにしてからの、予想出来ていたんだけど来て欲しく無かった10月以降の急加速。
ほんわかしていても先輩な糺谷先輩がとても可愛いくて仕方ないんですが、それでも望月君と一つ違いなだけだから弱い部分や不安な部分もある筈で、そこにあんまり気付いていない望月君に『もう一歩踏み出せや!!』と読んでてやきもきしました。
でも、意図的か追い詰められた事で覚悟を決めたからかは不明ですがちゃんと最後は決めたので許してあげよう。
もう終わってしまう世界だけれど、その短時間だけでも二人には幸せになって欲しいです。
……あ、やっぱヘタレな部分はちょっと許せない。親公認なんだから手を出せよ望月!男の子だろ!!!