先輩と僕の最後の約1年間

高校生の望月亮が所属する地学研究部。活動内容は何にもなく、先輩である糺谷唯とただダラダラ部室で漫画を読んだり、おしゃべりをしたりするだけ。そんな二人の他愛ない日常が描かれる日常系な作品なのだが、ある日地球に小惑星が落ちてくるニュースが流れて来て……。

惑星衝突で人類滅亡の危機。数多のフィクションで描かれてきた内容だが、本作の場合、そこでの起きる劇的な変化を描くわけではなく、少しずつ確実に変わっていく世の中の変化を二人の会話を通じて描き出していくのが面白い。

地球に小惑星が落ちてくるというニュースを耳にして、最初にやることが二人で『アルマゲドン』を鑑賞するというのもおかしいし、人類最後の日に二人で見晴らしのいい土地へ落ちてくる星を眺めにゆるい感じで旅行に行くというのも小気味よい。

世界の終りと対比して描かれる高校生二人の日常生活。二人の決断が世界を救う……なんてことはないのだけど、抗えない運命に対してそれでも変わらずにいようとする二人の会話がじんわり心に沁みて来る作品に仕上がっている。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

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