分かるようで分からない特性、サイコパス。


 今となっては一般語にすら感じられるサイコパスという言葉。

 血も涙もなく、この上なく残酷な、悪の象徴として描かれる彼ら。
 
 本当にそうなのだろうか。厳密な定義を覗いてみる限り、イメージとはかなりかけ離れている……?



 ホラーやミステリー、サスペンスといった分野は、幽霊やエイリアン、モンスターといった人外による襲撃か、
 心を持ちつつも、欲望や悲劇の果てに一線を踏み越えてしまった、人間的な犯行、蛮行のどちらかだった。
   
 そこに現れた第三勢力。

 それがサイコパス的な存在、前二者の要素を併せ持った「理解の及ばない人間による侵食」だった。
 堂々とした振舞い、(予想もつかない)やりたい放題の所業にはカリスマすら感じられ、用語が現実で用いられている点も相まって、人気が出ること自体は何の不思議もない。

 しかし、知名度を持ったワードは大体ステレオタイプ化する。本来の用いられ方とまるで違っていたとしても、需要が訂正を許さないのだ。

 そういった「誤解」のようなものを本作は、きっちり指摘してくれる。


 何となくだが、現在のサイコパスの用いられ方は、「ヒーロー」と同じ文脈のような気がする。
 いかにも映像ばえしそうな言葉だということだ。