第9話Ver2 ジョークで見る異文化

 久しぶりの創作論更新で何を語るか、それはジョークです。金髪碧眼美少女とは直接関係のないことに思われるかもしれないですが、ジョークも文化の上に成り立っています。だから欧米の笑いについて知見を深めればあなたの金髪碧眼ヒロインに自然な外国人らしさが息づきますよ。


 さて、皮肉なジョークというとイギリス人のイメージが強いように思いますが、イギリス人に限らずヨーロッパ人は往々にして皮肉なジョークが大好きです。ジョークの内容と言うよりもジョークの言い方に国民性を感じるでしょう。


 大雑把に分けると


 イギリス、ドイツ、ロシアなどのアルプス北側はジョークを言った時に受けた相手が受け取る間を入れて、受け手がオチに気付いて笑うのを待つ。真顔で待ってシュールさをアピールする者もいる。


 フランス、イタリア、スペインなどのアルプス南側はジョークの内容そのものは皮肉で同じでも語り手本人が自分のジョークに自分ウケしながらノッて語ってしまう感じ。


と言ったところだろうか。


 ここで筆者が最も付き合いの長いイタリア人たちが持っているバルゼレッタと呼ばれるジョークを例として挙げよう。話し手本人の演技も含んだショートストーリーとして展開され、一般的に冒頭かオチでタイトルが提示される。以下は筆者がイタリア人に披露したタイトルが冒頭に付くパターンだ。


「イタリア男は息子よりも娘が欲しい」


 イタリア人男性が二人、仕事後にミラノの立ち飲みバルでカンパリをブラッドオレンジジュースで割った食前酒を傾けながら会話をしている。


「そう言えばカルロ、お祝いが遅れていたな。出産おめでとう、今日は奢るよ」


「ああ、ありがとう……マルコ」


「なんだ? おめでたいってのに元気が無いな。どうしてだよ?」


「いや、嬉しいことは嬉しいんだ。でもな、女の子が良かったよ」


「ああ、男の子だったのか。でもいいじゃないか男の子なら一緒にミランの試合も観に行けるしサッカーもできる。あ! 分かったぞ! インテルファンになるのが心配なんだな? 家族内ダービーは確かに最悪だな」


「いや、違う。そうじゃないんだ」


「違う? 何だってんだ? ナンパ男だらけのこの国で息子にしっかり女ができるか心配だってか? よせよ、そんな心配は娘を持つのに比べれば大したことじゃないだろ? 仮に娘だったとしてもイタリア男に一番免疫があるのはイタリア女だ。娘持ちの俺ですら心配していないくらいだ」


「いや、そうでもない」


「まだ違うのか? お手上げだ。答えを教えてくれ」


「いやな、うちのカミさんとマンマはパスタソースに使うニンニクやトウガラシの量なんかで事あるごとに言い合っててな。毎度最後は俺に『あなたはどっちの味方なの?』って聞いてくるんだよ。娘がいたら『娘だ!』って言えるだろ?」


「はっはっはっ! それいいな! 俺もカミさんとマンマが喧嘩したらそれ使わせてもらうわ! 俺も娘の方が大事だ!」


「羨ましい。じゃあ遠慮なく奢ってもらうぞ」


 以上、イタリア男は息子よりも娘が欲しいでした!


 日本のジョークもしばしば皮肉を含む場合はありますが、日本の場合はツッコミ役が「ここが笑うとこですよーー!」と観客に示すためのツッコミアピールを入れることで受け手がオチを明確に認知します。


 この日欧比較で感じたのは前章で述べた空気がジョークにも関わっているということ。欧米は個人対個人のコミュニケーションに慣れているから、オチを示さずに受け手の理解力に任せてもジョークが成立する。


 対して日本人は状況や環境といった空気や空間を用いたコミュニケーションに慣れているからツッコミが造り上げる雰囲気を含めて笑うのです。


 欧米的な笑いをあなたの金髪碧眼ヒロインに取り入れて彼女の欧米人らしい自然な笑顔を演出してみませんか?


Ver2 マルコの台詞が娘を心配する父親に向けるような内容で文脈にあっていなかったので修正。

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金髪碧眼ヒロインの作り方 かずきー @masaki0087

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