絶望など殴り倒してその先へ。異能によって神へ挑む、若者たちの架空戦記。

 現実をベースに構築された架空世界で、暴虐的な神の所業に立ち向かう連合軍の戦いを描いた、SFミリタリー作品です。
 ある日、突如として世界中に「神」と名乗る者からの不可解なメッセージが送られ、ウイルスの大流行により多数の国家が崩壊します。しかし、致死的な症状から生還した人々の中に特殊な能力を発現する者がおり、「悪魔の契約者」と呼ばれることになるのですが――、

 物語では、個性の強い能力者の若者たちと、彼らが所属する北欧連合軍の戦いが描かれてゆきます。
 主人公は「日ノ元帝国」から北欧へ逃れた若き軍人、「不破直」伍長。他民族が入り混じる連合軍だと日ノ元民は小柄で若く見えるものですが、直さんは少年兵とも見間違えそうなくらい小さく、声変わりもしておらず、……と、その真相はぜひ本編でお確かめください。

 プロローグにして整備中の戦闘機を乗りこなし、飛来してきた敵機を殲滅してしまうほど、強烈な行動力を見せる直さんと組むのが、ダイチェ出身で魔王と渾名される「ヴォルケ・ウルフリッヒ・ルードルマン」少尉です。
 顔を合わせた初日からいきなり殴り合うほどの二人が、物語が進むにつれてどんなふうに変化してゆくのか。友情ともロマンスともカテゴライズできない強烈な関係性と、二人を見守るやはり個性的な軍人たちとの関わりが、当作の魅力であり見どころでもあります。

 様々な理由を抱え軍人として生きることを選んだ若者たち(自称おじさんもいますがだいたい若い)が、それぞれの過去と向き合い、生き方を選んでいく過程は、生やさしいものではありません。その中にあって、自身も重い過去を背負いながら一貫してぶれない直さんの姿は、ものすっごく格好いいです。
 可愛らしい、いや、やっぱり格好いい、が相応しいですね。ぜひご一読ください。

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