世界一心霊スポットを巡った男による心霊体験記

きゃぴ太

トンネル

 これは大学時代にお金がなく、狂ったように心霊スポット巡りをしていた僕の実体験である。心霊体験はいくつかしてきましたが、これは一番ゾクッとしたものです。


 6月のじめっとした暑さのある梅雨の日だった。

 

 当時、僕は大学一年生の夏頃から心霊スポット巡りにのめり込み、仲の良い友人数名と全国の有名スポットをしらみつぶしに回っていた。


 心霊スポット巡りは、気軽にスリルを味わえるし、目的のない夜のドライブにもメリハリが出来る。何よりお金がかからない。


 しかし、大学二年生の中頃にもなると、有名どころは行き尽くし、何となく緊張感も薄れ、仲間内でも積極的に心霊スポットに行こうと言う者がいなくなっていた。


 だから、なぜその日に久しぶりの心霊スポットに行こうと言い出したのかは定かではない。誰が言い出したのかもわからないが、とにかく僕たちは夜10時に車に乗り合わせていた。


 僕「心霊スポットって言ってもなぁ・・。行き尽くしたよなぁ・・。」


 運転席に座る僕が、前を向いたまま誰ともなしにそう言うと、後部座席に座っていた友人A(男)がそれに応じた。


 友人A「逆にさ。実は地元に残ってましたってことはない?」


 その日の車の後部座席には、友人Aの他に、いつも心霊スポット巡りをする友人B(男)とC(男)が座っていた。また珍しく参加することになった友人Dちゃん(女)が助手席に座り、計男女5人のグループで心霊スポットに行くことになっていた。


 友人B「俺、ちょっとググってみるよ」


 僕が期待せずにフロントガラスを落ちる水滴をみていると、また友人Bが言った。夕方まで強く降っていた雨は、雨脚が弱くなっていた。


 友人B「●●(伏せます)トンネルってのがある」


 僕「●●トンネル?吹上トンネルとかじゃなくて?」


 僕は有名な心霊スポットの名前を挙げた。吹上トンネルなら旧トンネルも旧旧トンネルも数えきれないくらい行っていた。


 友人B「違うなぁ。個人ブログみたいなしょぼいHPだから、そんな有名なとこじゃないかも」


 なんだかあまり期待出来なさそうだが、あまり選択肢はなかった。その時今まで口を出さなかった友人CがBの隣で「あれ・・?」と首を傾げた。


 友人C「おれ、そこ知ってるかも」


 友人C「厳密にいうと、俺が知ってるというより、高校の時同級生だったG君いるじゃん?G君が行ったことあるって言っていたような・・。確か●●トンネルって・・。」


 G君は高校時代ちょっとだけやんちゃだったクラスメートである。僕は家が比較的近かったこともあり、連絡先は知っているくらいの仲ではあった。


 友人C「記憶違いかもだけど、もしG君の言っていたトンネルが●●トンネルだったら面白いかもな。もう二度と行かないって言っていたらしいよ」


 急に色めき立つ車内。もしかしたらそれなりに怖いのかも。


 友人C「あーでも場所が載ってないな。クリーンセンター近くって書いてあるから、そこを頼りにいけば近くまでは行けそうだけど」


 みんなでCの携帯を覗き込むが、確かに住所はぼかされていた。


 僕「そしたら、俺がG君に電話して聞いてみるよ。何なら家からも遠くないからバイクで先導してもらって一緒に行くか」


 僕はそう言いながら、G君に電話をかけ始めていた。


 ワンコール・・ツーコール・・!意外にもG君は直ぐに電話に出た。

 

 G君「・・もしもし」


 なんだか不機嫌そうなG君に気付かないふりをして、僕は要件を伝えた。


 G君「行かねーよ」


 G君は一層不機嫌になった。


 僕「頼むよ。場所が分からなくてさ・・。G君が行ったのは●●トンネルなのは確かなんだよね?」


 G君は頷いたのだか、呻いたのだかよく分からないトーンで、うんと言った。


 僕「え・・。結構やばい?怖かった?」


 僕はG君の機嫌を損ねないよう、心配そうな声を作ってそう言った。


 G君は、怖いというか・・。と言うと口を噤んだ。


 僕「え・・?もしかしてなんかあったの?」


 大したことではない。ただ俺そもそも幽霊とか好きじゃないから。と意外にも可愛らしいことをいうG君。


 僕「そしたら入り口まで案内してくれるだけでいいからさ・・。あ、Dちゃんもいるよ!」


 僕が粘り強く交渉を続けていると、しぶしぶG君が折れた。


 G君「わかったよ。でも絶対中には入らないからな」


 僕「オーケー!それで全然大丈夫!」


 僕は指でオーケーサインを作って社内に交渉成立を伝えた。


 その時助手席に座っていたDちゃんが初めて興味をもったようにこちらを見ると言った。


 友人D「・・結局G君は何があったのかな?」


 確かに。ネタバレになってしまうかも知れないが聞いてしまおう。


 僕「そういえばG君●●トンネルで何があったの?」


 マジで大したことじゃない。そもそも俺怖がりだし・・。と前置きをすると、G君は僕に聞いてきた。


 G君「●●トンネルが廃トンネルだってことは流石に知ってるよな?」


 当然である。そもそも使われているトンネルは心霊スポットにならない。(なっているのもあるけど)


 知っていると僕が言うと、G君は言った。


 G君「俺が行ったときはだけど・・トンネル内の明かりが全部点いた。」

 

 つづく






 

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世界一心霊スポットを巡った男による心霊体験記 きゃぴ太 @capita

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