第18話 春 なんといつの間にか一年経っちゃった!!
春
なんといつの間にか一年経っちゃった!!
あたしと、山本さん、メイは揃って、進級を決めた。
パパは当たり前だと言うけれど、留年した人だって居るんだから褒めてよってなもんだ。
先ずは相変わらず太々しい顔であたしを見おろす、東京バーバの写真に手を合わせる。
「バーバ、大学二年になるよ」と心の中でいうと、あたり前よと言われている気がする。
やっぱりパパのママだよね。
とその時なんか気配を感じた振り向くと縁側からバーバがあたしを見つめている。
「あっバーバ。来てくれたの」と言ってそのまま、這って近づこうとするとまたプイと居なくなってしまった。
人がせっかく進級したことを報告しようととしたのに。
まあいいか。
死んでなかっただけ、バーバは野良猫だから、どこで何に出くわすかわからない、それこそ車にでもはねられたら、そのままかたずけられてしまう。
いつのまにか、あたしは、バーバに心の依存をしている、まるで本当の東京バーバに話しかけるように。
そうだバーバにも二年生になったお祝いに、ご馳走でもしてあげよう。
なんか意味がわからないけど、まあいいか、その時あたしは春のポカポカした風が気持ちよくて、とても良い気分になっていた。
でもそういう時に限ってバーバは現れない。
そしてあたしが少し忘れた頃に、なぜかあたしがジョウバに乗っていつ時に縁側から見つめている。
あたしは大奮発して、近所のスーパーで一番高い猫缶を買うといつもバーバがあたしを見つめている辺りに置いた。
でもいつまでたっても現れない。
あたしが進級したことがうれしくないのか。
と思って、嬉しいわけないか、だってバーバはうちにやってくる野良猫だから。
そして忘れた頃に、ジョウバに乗っている時にまたあたしは後ろに気配を感じた。
振り向くと、やっと現れたバーバがいつものように見下したようにあたしを見ている。
「あっバーバ、今日はご馳走があるんだよ」あたしは、一昨日からおいてある。奮発した高い猫缶を食べてもらおうとして、バーバに近づいた、そしてまたしても、ジョウバの横に転げ落ちた。
でも今日のあたしはメゲない、這いつくばって、縁側に行こうとしていると、今日のバーバは、あたしのことを待っている。あたしは最後の力を振り絞り、というのはオバーだけれど、縁側に這っていく、そして縁側にやっとたどり着いたところで、またしても、バーバはプイと走りさってしまった。
あたしはそこで力尽きて、仰向けになった。
すると空には抜けるような青空が広がって、春霞の暖かい風が鼻についた。
もう散ってしまったはずの桜の花びらが、あたしの鼻の上に落ちてきた。
それを手でつまむと、
「あー桜の花びらだと」とあたしは子供のように声を上げた。
ふと首を横に回すと、置いておいた超高級猫缶が半分くらいなくなっていた。するとあたしはさらに嬉しくなって、いつまでも、いつまでも、クスクス笑っていた。
東京バーバ 帆尊歩 @hosonayumu
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