第3話ㅤ油断大敵
ブチ......プチ......ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
カサカサ......ギチギチ......ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
グチャ......グチュ......ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
ジャキンッ......ボトボトッ......
ザシュッ......ブチブチブチッ......
楽しい楽しい害虫デストロイのボーナスタイム。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
体液が飛び散り、肢や身体のパーツが散らばって、床や俺の身体を汚していく。
汚ぇ......でもこれはボーナスステージ。
まるで経験値の宝石箱やー!!
気が狂いそうな程に虫が湧いているので、経験値&熟練度が(あれば)貯め放題の環境だ。
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その虫の大群を、ただひたすら潰して......潰して......潰して......潰していく。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
たまに叩き潰したり、ハサミで切断したり、尻尾で突き刺したり、引きちぎってみたり......
ハイ。現在、この最悪な虫ワールド五日目(体感で)の俺です。
すこーしずつだけど、この環境に慣れてきてしまった事に死にたくなっています。
お腹が空いてきたら、毒の部分の中から比較的吐きそうにならなそうな箇所を選ぶ。
それを口に放り込んで空腹を誤魔化す......なんて事はもう普通にできるようになった。
ピリピリしたり、激痛が襲ってきたり、口から液体が漏れて止まらなくなったり。
胴体の部分はクリーミーで美味しかったりする......と言った事を聞いた事はあるけど、その領域に踏み込めるほどの覚悟は決まっていないし、切羽詰まってもいない。
いくら慣れてきたといっても、そこまではできない。
いずれそうなるのかもしれない......なんて事を思ったりもするけれど、そうなる時は俺の心は壊れていると思う。
空腹と疲労がヤバかった時でも、それを無視して動き続けてみたりした。
すると、どんどん動きが鈍くなってきて、満足に動けなくなった。
疲労や空腹のバッドステータスは無視できない事がわかったので、マシな部分だけに絞って食べている現状。
毒が栄養になっているのか、案外栄養があるのかは詳しくわからないけれど、腹さえ満たせれば簡単な睡眠だけで動き回れる。
それでも一口毎に、毒のダメージを受けてしまうから食べるのに時間が掛かるし、満腹になるまで食うことが出来ない。
どうにかしてコレを改善する事が出来ないのかと、常々思考しているが改善策が見い出せない。
そんな感じで数日を過ごした。ここで俺の一日の流れを説明していこう......
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・虫布団から起きたら、朝食の毒を食べる
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・お外に出て
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・虫屋敷に戻って昼食の毒を食べてから、お昼寝をして体力回復
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・午後からは害虫駆除の
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・バイトを終えてからは夕食に毒を食べて、仮眠をとるㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
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・仮眠の後は清掃作業とベッドメイク、明日以降のご飯用の毒部位の下拵え
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・夜勤後には、明日のご飯の選別をしてから虫布団に入って就寝
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......こんな流れでございます。
バイトって言うよりかは、刑務作業と表現した方が合っている気もしなくもないけど。
虫の監獄に閉じ込められる程、悪行をした事はないんだけどな......
俺自身の成長に関しては、レベル40までは順調に上がっていったけれど、レベル40から上に上がるのはかなりシビアになってきている。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
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三日目の終わりにレベルが40に到達してからは、丸一日頑張ってもレベルが2しか上がらなくなってしまった。
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ちなみにステータスの確認は、レベルしか見ていない。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
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現在は、切羽詰まったギリギリのバトルをする気配は無く、作業のように虫を叩き潰すしかしていないから慎重さは置いておく。
能力の成長度が早いか遅いかなどを確認しながらやってしまうと、成長が全然出来ていなかった場合に心が折れてしまいそうなので。
あと、こんなテンションを保っていないと色々と限界なんです。察して欲しい。
この数日間の作業のおかげで、尻尾の扱い方や、【一点集中】の使い方に効果、【霞】の使い心地やクールタイムのことなどが色々とわかった。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
尻尾の感覚に慣れるまでは少し時間が掛かった。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
人間には無い部位だから、仕方ないと思う。
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意識しても全然上手に扱えなくて困っていたけど、コントローラーを操作して尻尾を動かす......みたいな感じのことを頭の中で試してみたら、これが案外上手くハマった。
【一点集中】は、使うと尻尾が伸びて狙った場所に刺さる。かなりファンタジーな技だった。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
一体どんな原理でそうなっているのか......考えてもわかるはずがない。
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使用時は体が動かせないので、一か八かのギャンブルみたいなやり方には向かないと思う。
そして遠隔から狙撃みたいには使えなかったから、ある程度の距離からしか使えないみたい。
使用する際に、最も安全に使える距離を、早いうちに見極めていかないといけない。
【霞】については、クールタイムが長くなければ......としか思えないスキルだった。
攻撃を透過できると書いてあったけど、一秒だけ。
一秒経過しても攻撃が続いていたのなら死ぬだけだろう。そこがどうなるかわからなければ、緊急時に使えない。
その確認の為に弱い虫で試したところ、効果時間が切れた際にも攻撃が続いていた場合には、範囲外へと体がズレていた。
透過するって言うより、一撃だけ絶対に避けられるスキルと思っていた方がよさそう。
思い返しても碌な事がない。案外戦えるって事と、スキルはそこそこ優秀って事はわかったけど。
はぁ......今日も毒を食べて、経験値を貯めよう。
進化をする事と、自身の成長具合を楽しみにして今日も虫駆除を頑張ります。
殺って殺りますよ!!ちくしょう!!
◆◆◆ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
グチョグチョ......プチプチプチプチ......
こうして虫をデストロイしていく毎日を送っていると、倒しやすい虫と倒しにくい虫がわかってくる。
圧倒的に倒しやすいのは芋虫型。
動きは遅くて防御力が低いが、気持ち悪さが群を抜いている。
内容物が飛び散るのも、潰した感触も気持ち悪くて倒した後の後味の悪さは異常。
倒しやすさだけしか取り柄がない。
俺と相性が良い虫は、バッタ型。
跳ねようとする一瞬の溜めの時に、【一点集中】の一撃を叩き込む。
その際に麻痺らせれば、一撃必殺できていなくても余裕で殺せる。なので見つけ次第狩る事にしている。
最も倒しにくいのは、皆大嫌いな台所の悪魔。
黒光りするヌメヌメとした見た目の不快さと、動きのトリッキーさや素早さ、異常な繁殖力と生き汚さを兼ね備えた完全無欠の嫌われ者。
......まぁGと呼ばれるアイツだ。
素早いし、逃げ足も早い。
そして簡単に致命傷を与えられない上に、毒が効きにくい。
そしてコッチのヤツらはやたら攻撃的で貪欲。
噛む力が強くて、俺の甲殻すら噛みちぎる。
寝ている時に、隙間から侵入ってきて噛みちぎられる事件が起きるのが多々あった。絶対に許さない。
再生するのはわかっているけど......かなり痛いし、不意打ちは悔しい。
ヤツの保有する毒は弱いのが幸いだけど、痺れて動きが鈍る。
このゲーム......痛覚は普通に感じて、軽減など全くされていない。
普通に発禁モノじゃないのか。トラウマ量産機だろ。
初めての被弾がこのコックローチだったので、憎しみが溢れて止まらない。
......重ねて言うが、絶対に許さない。絶対にだ。
ヤツらは見つけたら即殺!と意気込み、作業を続けていく。
......同じ作業を繰り返していると人間誰しも気が緩む物だろう。
プチプチグチョグチョといつもと変わらず虫を潰していた俺に、急に激痛が襲ってきた。
右の後ろ肢、右の中肢、左の後ろ肢に焼かれたような痛みが走った。
確認してみると、焼け爛れたようになっている。
焼けた部分の中心には針のようなモノが突き刺さっていたので、どうやら俺は何かに狙って攻撃されたみたいだった。
後方を確認してみるが、虫の死骸しか見えない。
俺が倒してきた虫達を隠れ蓑にして攻撃をしてくるとか......知能のある虫は厄介すぎる。
すぐに下手人を見つけられそうにないから、虫の死骸の陰に隠れて一旦深呼吸。
気持ちを落ち着かせる。
刺さったままはマズそうなので針を抜いて、毒が抜けるのを待ちつつ、現状を打破する為にどうするべきかを思考していく。
最初の激痛は落ち着いてきたけど、ジクジクと痛む肢に気を取られる。
初めて会うタイプの狡猾な敵。
こういったタイプもいると、想定出来ていなかった己の甘さを悔やむ。
作業と割り切るのは良くなかったなぁ......
先ずは回復を最優先。存分に動けないと多分全身がこうなる。
俺に毒が回るまで大人しく待つと思うから、その時間をありがたく回復に充てさせてもらうぞ!
絶対に狩ってやるから、精々首を洗って待っていろや!!
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