第2話ㅤ確認作業
虫の死骸と体液に塗れながら目を覚ました。
体を起こすとグチャグチャと音が鳴って気持ち悪い。
目が覚めたらいつもの自分の部屋で目が覚める......。
なんて淡い期待を抱いていたけれど、そんなものは抱くだけ無駄だったみたいだ。
早くこんな環境から抜け出して普通の生活に戻りたい。
その一心で、折れそうな心を無理矢理奮い立たせ、行動を開始する。
体の感覚や体調を確かめるように、少し動いてみたけど問題は無さそうに思える。
体の疲労感がしっかりと取れていたのは助かった。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
体の状態は、ある一つの事を除いて概ね良好。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
その一点だけは本当にリアルに作らなくていい。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
何を考えて作られたゲームなんだよ。製作者はガチで狂ってやがる。
......はぁ。もういい。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
寝る前は色々あっていっぱいいっぱいになっていて忘れていたけれど、ここはゲームなんだからメニュー画面なんかがある筈。
声が出ないので、メニュー画面開けと念じてみた。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
メニューは開かなかったけど、代わりにステータス画面が出てきてくれた。
メニューが無いのはどういう事だよチクショウ。注意事項や説明書みたいな物が無いのは不親切すぎる。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
無い物ねだりをしたとしても、現在これしか無いのだし、今後追加されたりする事なんて無さそう。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
今はこれをしっかりと見て、俺の現状を確認して、生存率を少しでも上げられる戦略や方法を見つけないとだ。
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ファントムスコルピオ
〔毒〕
Lvㅤ14/50
ATK:D−
DEF:E
AGI:E+
VIT:D−
INT:F−
MID:F−
SKILL:【混合毒】【一点集中Lv1】【霞Lv1】【毒抵抗力】
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これは強い......っぽいよな。
初期段階としては優秀だろう。かなり脳筋気味だけど。
スコルピオって事は......蠍か。
俺は蠍らしい。
蠍には優秀そうなイメージしかないから嬉しい。そこまで気持ち悪くないし。
ハズレの種族を引かなくてほんっとーーーによかった。
グロいブニブニボディで、産毛が生えているような虫じゃなくてよかった。
ただ圧力には弱かったと思うから、潰されるのだけは気をつけないと。
さて、俺の事や能力についての説明は見れるのだろうか?名前だけで理解できるものは一点集中くらいだ。
ステータス画面を眺める。
んー?これはどうやって見るんだろう。
凝視しても念じても、うんともすんとも言わない。
考えてもよくわからないから、それっぽい行動をしてみる。
先ずは文字の部分をタップしてみて、それが違ったのなら別の方法を探せばいい。
ステータス画面の文字に触れてみると文字が表示されてきた。
半透明のボードみたいなものに触れられる謎現象。
ダメ元でやってみたけど、やり方は合っていたみたいで、説明が表示された。
ファントムスコルピオ――まるで幻を攻撃したかのように攻撃を躱す蠍
敵に静かに近づき、尾の毒で相手を麻痺させ、鋏や尾で強力な一撃を浴びせてくる厄介な個体
再生力が強く、死なない限り時間経過で損傷が回復していく
〔毒〕――麻痺毒(D 0/100)
Lv――成長値
MAXになると進化先が表示される
ATK――物理攻撃力、筋力
DEF――物理防御、耐久力
AGI――敏捷
VIT――生命力、スタミナ
INT――魔法攻撃力
MID――魔法抵抗力
【一点集中】――貫通力のある尾での一撃
攻撃時に毒も付与できる
【
1度使用すると30分経たなければ再使用できない
成長時にクールタイム減少or効果時間延長を選べる
【毒抵抗力】――毒に抵抗する力
抵抗力の強さはVIT依存
INT=賢さではないみたいでよかった!俺の知能指数はF−じゃないんだ。
【混合毒】と【霞】はチートと言えなくもない能力だけど、使いにくそう。
まず混合毒は......
どうすればいいんだろう。毒攻撃を受ければいいのか?初っ端からよくわからない。
毒を取り込むって......まさか毒虫を食えって事じゃないよな。
想像しただけで吐きそうになる。どうしろっていうんだ!!
......はぁ。他を考えよう。
【霞】は致命的な攻撃を受けそうな時の緊急脱出用。
使えば成長していくのか、俺のLvアップで成長していくのか。
使えば成長ってのは、クールタイムが長いのだと本当にやりにくいから勘弁してほしい。
この【混合毒】の能力は、まぁ試してみなきゃダメだろうな。
凄く嫌だけど、虫の死骸から毒を採取して受けてみよう......
毒に対しての抵抗力があるらしいから、これをくらっても一撃で死ぬなんて事は無いと思う。
......無いよね?
多分この【混合毒】が俺の生命線になるんだよなぁ。
だから......試さない訳にはいかないんですよね。
まさか毒を自主的に摂取する日が来るとは夢にも思わなかったよ......
ふぅ、ヤりますか。
足元で死んでいる蜂っぽい虫から針を採取して、自分の足に刺す。
チクッとした痛みの後に、刺した足から力が抜けていく。
バランスを崩して倒れてしまった。
なんだこの毒は......
数秒で治まったけど、これはキツい。
痺れとかは残らず、問題なく足を動かせるようになった。
無事に健康体に戻れた事に安堵し、毒の項目を押してみてどうなったのかを確認してみた。
〔毒〕
麻痺毒(D 0/100)
筋弛緩(H 1/100)
しっかり増えていた。よかった。
しかしやべーな筋弛緩って......こんな風になるのかよ。
......次は、さっきのとは別の蜂の針を食べてみる。
虫本体を食べるよりかは全然マシだと思って口にする。
噛んだ瞬間に口の中が感電したように痛み、痺れた後、俺の口から何か液体が出てくる。
なかなか止まらなくて怖い。
さっきの毒より強かったのか......それとも経口摂取がダメだったのか......
鑑定が欲しい。よくよく考えてみると確認しないで毒を受けるとかヤバいよな。
〔毒〕
麻痺毒(D 0/100)
筋弛緩(H 1/100)
出血毒(H 2/100)
......あの液体は俺の血だったのか。
この感じだと100まで溜めれば強くなるっぽいなぁ......
なんとなくだけど、経口摂取した場合は、口の中だけで毒が完結するっぽくて、加算量が多い気がする。
この考えがもし違っていたとしても、さっきの毒がただ強かっただけだ。
毒の強弱により、蓄積する比率が変わる、もしくは受け方で変わるってわかっただけで今は良しとしておこう。
ある程度は自分の能力がわかった。
残りの能力は戦闘してみないとわからない。
けど、これならある程度はちゃんと戦えるし、レベルを上げる事に専念しよう。
......色々と思考する方面に、無理矢理意識を持っていく。
そうして嫌な感覚から目を背けようとするも、ダメ......
どう足掻いても意識させられてしまう。
お腹が空いた。
こんな感覚は嘘であってほしい。ふざけんなクソゲー!!
普通の食べ物を手に入れられるイベントはないのだろうか。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
このままだと下処理無し、それも未調理で食べなければいけなくなるぞ......ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
毒の部分は口に入れられたけど、それとこれとは訳が違う。
......あれ?ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
毒の部分を口に入れる時の俺は、全く忌避感を感じる事がなかったぞ。
何故だ?ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
......いや、それはいい。少し希望が見えた。
それならば毒だけでお腹いっぱいにすればいい。
空腹感を誤魔化しながら、自身の強化もできる一石二鳥の案だろう。
多少のポイズンは、スパイスか何かだと思えばいいんだ。
まだ空腹って程度だから、耐えられなくなるまでは無心でレベルを上げよう。
ただジッとしていてもお腹は空く。どうせそうなるのなら、少しでも強くなるべきだ。
虫の死骸の中から外を伺い、安全かどうかを確かめてみる。
あのバケモノ五匹は相変わらずアホみたいに暴走している。
あいつらはスタミナ切れないのか?相変わらずゲームバランスがおかしい。
あんなに必死になって虫を食べているのを見ていると、美味しいんじゃないかとも思えてくる。
......あ、やばいぞコレは。
現状考えるべき事はそうじゃない。
俺の【混合毒】みたいに、虫を食べる事でヤツらも何かしら強化されていく......なんて事もあるよな。
寧ろソレが最有力な説だろう。
虫食いに忌避感が無く、時間経過と共に強化されていくスタミナお化けのボスが複数体......
俺、詰んでる気がするんだけど。
クソゲー、マゾゲーの類をもう少しやっておくべきだったか。
絶対にこんな場所で死にたくない。だから精一杯抗ってやる!
運営は死ね!最高に苦しんで死ね!
現実に戻る事と怒りを心の拠り所にして動き出し、虫の駆除作業を開始する。
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