第5話ㅤ初めての進化

 ボロボロになり、疲れきっている身体に鞭を打って頭と指先(鋏)を動かす。


 身体が悲鳴をあげているが、これが終われば休めるから我慢してほしい。



 進化可能の部分をタップ。


 表示された進化先は三つだった。





 ・ファントムスコルピオ(A)

 ・ファントムスコルピオ(D)

 ・ファントムスコルピオ(S)




 おーっと......


 AとDは、攻と防って意味でいいんだよな?


 だとするとSってなんだ......?


 スピードか?


 でもなぁ......それだとAGIだからAのはずだろ?


 ダメだ......考えても全然わからん。


 説明が出てくれればいいんだけど、そこらへんどうなのかな?

 押してみたらそれが即選択されちゃいました☆


 ......なんて事になった場合には目も当てられない。


 攻防共に必要なのは理解しているんだけど、それよりもスピードは絶対に欲しい。


 スピードのSか、何か違う意味のSなのか......




 はぁ......これは賭けになるなぁ。


 押したら説明が出るか、そのまま選択されました......となってしまうのか。


 選択されてしまった場合、それがスピードとかそっち系のSであってください。


 スカだったら場合には、諦めて死を選んでリセマラするしかない......



 ふぅぅぅぅ......


 なるようにしかならないか。


 南無三ッッ!!




 文字をタップした瞬間、おや?サソリの様子が......!?





 とはならずに、説明が表示された。


 よっし!賭けに勝ったぞ!!


 ・ファントムスコルピオ(S)――ファントムスコルピオの特殊進化個体

 多種多様な毒を操り、再生力が通常種よりも高いのが特徴

 再生力が強くなるが、防御力がやや下がる



 おぉっと!こいつぁ毒、再生特化型の進化先っぽいっすね。

 普段の俺ならば、特殊進化ってワードに即ホイホイされている所だ。


 しかし思考放棄してポチッたら、今後詰む可能性もある。


 疲れはヤバいけど、頭はまだ動くから死ぬ気で動かせ。


 まだ猶予があるうちに、他も確認しておかなきゃ。



 ・ファントムスコルピオ(A)――ファントムスコルピオの攻撃特化の進化

 攻撃力とスタミナが上がるが、敏捷性と知力が下がる



 ・ファントムスコルピオ(D)――ファントムスコルピオの防御特化の進化

 防御力がかなり上がり、精神力が上がるが、攻撃力と敏捷性が下がる



 うーーーん......微妙ォォォ......


 力こそパワーだ!の攻撃特化型。


 貴様の攻撃なぞ無駄無駄ァ!の防御特化型。


 常時ホ〇ミ状態で突撃していくゾンビアタック型。




 ............先程は微妙と言ったけど、こうして考えてみると......一応どれも捨て難く思える。




 でもなぁ......


 捨て難いとは思うんだけど、敏捷性のマイナスがいただけない。


 ......よし、シンプルに考えよう。



 このクソみたいな生存競争を勝ち抜く為に、一番必要なモノは何なのか




 ......考える迄もなかったわ。



 この身体が答え。


 満身創痍でボロ雑巾状態、現在再生待ち。




 カッチカチの防御力があっても、急所や関節などの脆い部分は鍛えられないし、そこを狙って毒を撃ち込まれれば隙も増える。


 パワーがあっても、基本的に虫は脆いからオーバーキルになるだけだ。

 毒付与の貫通攻撃がある俺ならば、そこまで重視する項目ではない。



 そう考えると、万全な体制を維持する事が何よりも重要だろう。

 基本的にヒットアンドアウェイ、避けて避けて避けて......隙あらば毒の尾を刺す。


 これしかないな。

 避けきれずに被弾しても、早く回復ができると思えば心の余裕が違う。


 この選択が失敗にならない事を祈って、ファントムスコルピオ(S)をポチる。





 あ、やべぇ......


 体が動かない......それに意識が飛びそう......


 安全と思える場所で進化をしましょうって注意書きしておけや!!!


 はぁ......寝床にしている場所で...やって...よか......った............








 ◆◆◆






 ここに来てから初めてぐっすり眠れた。


 目が覚めてすぐに、この状況ヤバイと思い、焦って飛び起きて警戒態勢を取る。



 数秒を要したが、状況が理解できてくると、緊張していた体から力が抜けていった......


 ひとまず、何事もなく無事に目が覚めた事に安堵する。

 よく寝床まで戻ってから進化したな!進化前の俺よ!



 さて、進化した自分のニューボディを確認しますか......


 自切して欠損していた肢と尻尾は、今では元通りにしっかり生え揃っている。


 鋏に目を移す、そこには少しだけシャープになってカッコよくなった鋏。

 全身像を確認できないからはっきりとはわからないけど、体色は灰色が混ざったような紫。


 何色と表せばいいんだろう......


 考えてもわからないからそこはもういいや。でも色味は結構好き。



 さぁ、メインイベント。ステータスを確認していくぞぉぉぉぉ!!


 ───────────────────────────────────


 ファントムスコルピオS


〔毒〕


 Lvㅤ0/60ㅤ


 ATK:D+


 DEF:E-


 AGI:D+


 VIT:D+


 INT:F


 MID:F+


 SKILL:【混合毒】【一点集中Lv3】【霞Lv2】【毒耐性】【危険察知Lv1】【自己再生】



 ───────────────────────────────────



 劇的にステータスが伸びている......そんな事はなく、甘い幻想は打ち砕かれた。


 でも確かに成長する事は出来ている。レベル上げを頑張って、また進化出来るまで頑張るぞ!!


 お次は......スキルと毒の確認をしようか。


【危機察知Lv1】――自身の身にに危険が迫っている事を報せてくれる


【自己再生】――再生能力

 スタミナを使用して再生能力を一時的に高める



【危機察知】はそのまんまだな。

 これからかなりお世話になると思います。どうか私めをよろしくお願い致します。


【自己再生】は......なんか思ってたんと違う......


 字面から再生能力が強くなるかと思っていたけど、体力を削って欠損を回復させるのか。

 ......ピッ〇ロさんみたいだわ。レベルが無いから緊急事以外では使用を控えて、ここぞと云うときに取っておく感じだなぁ。



 うん。続きを見てみよう。

 レベルの上がった【一点集中】と【霞】、ちょっと嬉しい【毒耐性】を確認していく。


【一点集中Lv3】――貫通力のある尾での一撃

 攻撃時に毒も付与できる


 ......変わっていない。

 あれ?レベルのとこが触れるっぽい......ポチってみるか。


〘 貫通力強化ㅤ0/5〙

〘 射程強化ㅤ0/5〙

〘 硬直時間短縮ㅤ0/5〙

〘 振り分け可能回数2回〙


 おっ!?これはヤバイぞ。

 どれも魅力的すぎて選べない......


 攻撃力を諦めたから貫通は欲しい。

 射程距離増加も必須。

 硬直時間も減らせるのならそれに越したことはない。


 最大レベルが15ならば、全て伸ばしていけるんだけど......こういうのは決まってレベル10がMAXなお約束だろうなぁ。


 とりあえず説明を見てから考えようと思い、とりあえず1番上の貫通力強化をポチってみる。





 ............表記が1/5に変化してしまった。ファ〇ク!!

 なんでここだけ説明無し、ワンクリだけで済んでしまう仕様なんですかァ?


 馬鹿なの?阿呆なの?ふざけんなよ! !



 運営への殺意ポイントがゴリゴリ溜まっていく。絶対に許さないからな。


 これで強化の残りは一回......このまま貫通力を上げるのは得策じゃない。


 身の安全の為には、残り二つのどちらも必須なんだよな。

 うーん......硬直時間は射程が伸びれば、その距離の分だけ補えると考えるべきか。



 あーもう......第六感みたいなセンスの部分を強化するスキルが欲しい。


 うだうだ考えていると、永遠に悩み続ける羽目になりそうなので、先程の自分の考えに従って射程強化にする。


 今の思考では最終的に......


 1、貫4:射4:硬2

 2、貫5:射5:硬0

 3、貫3:射4:硬3


 この三つの内のどれかにするのがベストかなと思っている。


 貫通力は硬い相手と戦わないと実感出来なさそうだけど、憎きムカデ野郎と戦うには強化必須だと思う。

 射程は今現在一番重要視していると思っていい。遠隔からぶっ刺して毒を注入すれば、硬直時間を無視できる気がする。


 相手に毒を盛れるのを、ついさっき思い出したので、硬直時間の優先度はさっきよりも下がる。


 という訳で、貫通力と射程に1ずつ振って、【霞】はクールタイム減少に振った。


【霞】のポイントは、クールタイム減少と、効果時間延長が0/10ずつだった。


 こっちは全てをクールタイム減少に振ろうと思っている。

 多分最後までずっとこの気持ちは変わらない。



 ・【毒耐性】――毒への耐性

 自身の保有する毒には強力な耐性がつく

 無効にはならないので注意



 ............泣きそう。

 激痛と苦痛を伴う食事が、痛みを伴う食事くらいに変わるんだよね......コレのおかげで。

 今回の進化で一番嬉しい出来事かもしれない。



 ラストは毒の確認。

 どんな感じに仕上がっているのか、結構楽しみにしていた項目。



〔毒〕

 麻痺毒(C 14/100)ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 筋弛緩(G 63/100)ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 筋収縮(G 9/100)ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 出血毒(F 86/100)ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 溶血毒(H 27/100)ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 筋痙攣(H 2/100)ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 筋壊死(H 1/100)ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 虚脱(H 92/100)ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 強酸(F 11/100)ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ



 ............こう見ると、あの症状は、あの毒が原因だったのかって納得した。

 もっと色々な種類を摂取していた割には、種類が少ない。似たような毒は統合されているのかな?



 筋〇〇系の毒と虚脱はガチで辛かったなぁ......


 血系の毒は、血が出てるって感じではなく、体液が止まらないって感じだからそこまで辛くなかった。もし赤い血が流れてた場合なら、その時はパニックになっていたと思う。


 それにしても字面がやべぇ。毒の種類って色々ありすぎて怖いわ。


 後は、うん......まぁ自分の体で効果を体感しているから、相手にどんな効果がいくのかはわかる。

 この毒知識はきっと、俺のこれからのサバイバルに役立ってくれると思う。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 さて、これで一通りの確認は終了。

 現在のコンディションはかなり良い。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ニューボディの試運転を兼ねた経験値稼ぎに行くかね。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 絶対に生き延びてやるからな......クソ人間共も、クソ虫共も覚悟しとけや!!



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