優しさと臆病が明日を連れてくる

主人公イオは「祟られたら嫌だな」という理由から、幽霊少女ゴーの頼みを聞くことにするのですが、このイオがどこまでも優しい。
ゴーを怖がる素振りは一切見せず、バイトを休んで、けして余裕がある生活ではないのにデート資金を惜しむこともありません。
むしろゴーのほうが、死んでる私なんかのためにもったいないと止めるくらいです。
そんなやり取りが微笑ましく、イオの自然な気遣いに読者はゴーと同じく惹かれていくはずです。

そしてゴーは遠慮がちで、好きな人の帰りを待っていたり寝顔を見つめていたりと健気な恋する乙女です。
でも、一歩柵を越えたいと思っていて、そんな気持ちがイタズラに表れている、無邪気な危うさのある十代の悩める子どもでもあります。揺れる彼女の心は共感を呼びます。

作品全体からはイオとゴーを見守り包むようなやわらかさを感じます。そう感じるのはきっとバンド仲間たちの存在でしょう。
気負わず、背伸びすることなく、付き合っていける仲間たちがイオという人物像を形作る一役です。だからこそもう少し、ゴーを含めた彼らとの絡みを見たかったなと思います。

見所は終盤の夜桜と幽霊と献歌です。歌詞にもぜひ注目してみてください!

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