番外編 付録、腐女子編
ジャンルとしての「百合」はいつ発生したものか分からないと言う事を書いていたら、コメントにて、読者様のちありあ様から、情報を戴いた。
分量も多くなり、あちこちに差し込むことになるために、ここでは番外編として、記述することにした。
「百合」の源流は恐らくコレであろうという指摘であったので、調べてみたがかなり古い作品で、ここから魅惑的な「百合」を生み出すには相当な想像力が必要である。
「じゃんじゃじゃーんぼすぼろっとだい」
テレビマガジン1975年7月号~1976年7月号に連載された原作:永井豪、作画:真樹村正とダイナミック・プロ
とくれば、すぐに思い当たるのはマジンガーZであろう。
ボスボロットはそのマジンガーZに登場するロボットで、それを主役とした漫画である。
このボスボロットは後に続く巨大ロボットアニメの中に登場するコメディー役ロボットの元祖となる。
ここに登場する、女の子型のロボットとヒロインを丁寧に描写して絡ませたものだろうか。それとも原作がここに登場する女性陣を絡めた、女性同士のラブラブものなのか、私がこの作品を読んだ事が無いために、正確なところは分からない。
何分にも原作が永井豪氏である。この時代におけるエロギャグの大家である事を考えれば、女性キャラ同士を絡ませてしまう表現があったとしても、何ら不思議もない。
この時代では、まだあらゆるものを娘化する発想はないので、ボスボロットを娘にするのは後の時代である。
取り敢えず私には、少し想像がつかない。BL等の耽美系のほうがまだ、想像しやすいのだが。
この「百合」が存在した時期は私には想像するしかないが、作品が75年から76年なので、どんなに遅くとも76年頃には、存在したのであろう。
くりいむレモン 黒猫館
くりいむレモンシリーズとしてはPart11であり、フェアリーダストが多少はメジャーになってからの作品である。
これは徳間コミュニケーションズからの出版で文庫本が出ている。1987年である。
このくりいむレモンシリーズは80年代の問題作OVA(オリジナルビデオアニメ)である。(当初VHSでのみ販売された。)
「美少女アニメ」とも呼ばれるアダルトアニメの先駆けである。
これはコアなファンがついて、長続きしていき2001年の新世紀くりいむレモンシリーズまで続く。その後のくりいむレモン New Generationシリーズは性描写をカットしたライトな物になった。
1984年からフェアリーダストが制作し、創映新社が発売した日本のアダルトアニメビデオ作品のシリーズであるが、実はこの作品は、当初はアンダーグラウンドな作品である。
未成年性行為が堂々と描かれてしまったOVAであるために、正規の販売ルートで売る事が難しかった作品なのである。
それゆえに最初アダルトビデオ・ショップで売られることになった。
よく引き合いに出される、アダルトアニメ『仔猫ちゃんのいる店』も1984年である。
くりいむレモンの第1作は媚・妹・Baby(1984年8月発売)
ちなみに、私の東京時代の知り合いがこの制作に少し関与して、裏話をしてくれた事がある。
それは、この時代、こういう作品では当初は正規のスタジオを借りることが出来なかった、と言う事である。(
そこで、最初はマンションの1室において一部の録音も行われたという。
効果音のためにこの知り合いは近所の肉屋に、頻繁に大量の挽肉を買いに行かされたと言う。
この挽肉をこねる音を録音してSEとしたという、笑い話がある。(実話である)
Part11黒猫館(1986年1月発売)
Part12いけないマコちゃん MAKO・セクシーシンフォニー後編
この両作品において、レズ描写がされる。
恐らく、コミケなどにおいて、堂々と百合作品が同人で出てくるのは、この86年よりは後であろう。(映像作品が市販されたのだから、臆することなし、となったであろうことは、想像に難くない。)
このあたりの美少女系の流れについて記述するとなると、80年代の初頭の超有名アニメ作品、「超時空要塞マクロス」のキャラ作画をした美樹本晴彦氏あたりからの流れを書かざるを得なくなるために、ここでは全て割愛する。
このあたりの同人を含んだ美少女物への傾倒とその後の「レモンピープル」に代表される、美少女漫画雑誌の歴史と変遷を書かねばならなくなる。
このあたりも同人誌と深く深く結びついているのだが、ここはとてもディープな世界になる。
さすがにそれは、「ファンジン」について書いている、本稿の範囲を大きく逸脱している。
(そもそも、くりいむレモンへの詳しい言及で既に逸脱していると言える。)
恐らくはこの後、同人によって取り上げられている「百合」は、作家グループ「CLAMP」の作品である、『
ここに登場する3人の少女の冒険物語による漫画と、後のアニメは、十分にその素養があったといえる。
この少女漫画は、所謂、「大きなお友だち」と揶揄される成人男子達がその雑誌を購入し、出版社の思惑とは違う所で大ヒットの兆しを見せていた。
「CLAMP」の作画が上手であったこともあり、そのキャラは男性にもキャッチーであったことは間違いない。何故なら男性諸氏にしてすら、この3人を絡ませている同人誌を書かせているくらいである。
つまり、男子による、通常ならアダルトとしてありがちな性行為を排した男性の描いた百合物も存在する。
という点で特異である。
その後は大きな有名作品が登場した。
(ちありや様から指摘があるまで、失念していた。)
『マリア様がみてる』は有名な作品で元々は少女向けライトノベルという位置づけだ。
有名なコバルト文庫である。発売は1998年4月
漫画はマーガレットで連載されている。
アニメシリーズも出ており、このアニメ作品は男性諸氏にも評価高く、「百合」という言葉が極めて一般化した作品であろうことは間違いない。
さて、ちありあ様によれば、女性のオタクであるところの「腐女子」と言うのは、3つの大きなグループに分かれていたという。
男性諸氏から見えた大きな区分はどちらかと言えば。
1.男性の同性愛を、その行為も含めて過激に描く「掛け算組」。
「○○×□□」と表記されて居る事から、こう言う同人誌は掛け算同人誌と呼ばれた。〇や□に美形男性キャラの名前が入る。
通常、これを男性諸氏は、「やおい」だと思っていた。
男性諸氏の「掛け算かよー」という言葉は随所で聞かれたので、一番多かった物と思われる
ちなみに掛け算の左側が、「太刀」、右側が「受け」となるという暗黙の了解があった。ここに「猫」も加わる3掛け算も見られた。
勿論、この「太刀」と「受け」が入れ替わってるだけでも、「ない、ないわー」となって、いわば痴話喧嘩的なサークル間での言い争いもあったという。
2.男性の同性愛を、妖しい雰囲気で描く、この場合は単体も有り得る、「ゴシック、耽美組」
このサークルのお姉さま方は、コミケやシティなどでも、黒いゴシック系衣装を纏いて、売り上げた後のスペースを午後のお茶会、等としていたサークルも随所に見られたために、男性である私でも簡単に区別がついた。
しかし、後年ここに百合族が混ざっているとは、私には分からない事だった。
この耽美組はシティ等でも極めて穏やかな集まりが多かったように記憶している。
とにかく午後は黒いゴシックな衣装でみんなが集まって紅茶を飲みながらクッキー食べてる姿が印象的であった。
3.どちらかと言えば、原作の雰囲気を重視しつつも、男性同士の同性愛をストーリーを少し捻じ曲げて描き込む、同性愛重視2次創作派。
以上であるのだが、ちありあ様によれば、これは腐女子の形態の1つに過ぎないと言い、ほかの2つは男性諸氏には、区別がつきにくい物である。
『カプ厨』
これはカップル厨の事である。注目する物語の原作に登場する男女を絡ませる恋愛モノだと言う事である。
当然のことながら、これは男性諸氏からみたら、普通のラブストーリーの2次創作にしか見えない。
2次創作小説と2次創作漫画のどちらもあったとのことである。
このカップル選定部分が、女性の各々の理想に対する違いからくる嫉妬や妬み僻みを生んでいると言う事で、ここも男性諸氏には想像が行き届かない部分であろう。
裏で、相当にドロドロしたものがあったのであろう。
『夢女子』
これは、その原作に登場する女性キャラをすり替えて、「オリ主」とする。
しかもそれが「作者本人、自分」でイケメン男性と恋愛関係に至るという「妄想組」であろう。
「妄想」であるから、よほど自信が無い限りは、周りの同様なサークルと骨肉の争い的な物があったであろうことは、ぼんやりとであるが、想像がつく。
こういう物における女性同士の争いは、恐らくは相当陰湿であっただろうと想像される。
これは、恐らくは後の女性が書くところのライトノベルで、悪役乙女ゲームの転生からのイケメンと結ばれるわ、ライバルは破滅だわ。ざまぁ。などや、意中の人と結ばれてしまいましたが、何か? 等の所と通底するものがある。
乙女ゲームというのは、只の媒介であり、この「夢女子」がそこに流れていると思って良いであろう。
女性の腐女子という括りは、男性諸氏には一見見た目には分からない物を含んでいた。
しかも、ここにはいる「百合」も恐らくは「掛け算組」や「耽美組」、「カプ厨」などに分かれたと考えると、とても男性のヲタクの同人誌とは広がっている世界が違っていた。
読者様のちありあ様には重ねて、お礼申し上げます。
<了>
※作品の年月は正確さを期すため全てWikipediaで調べたうえで記載している。
ファンジンとは何か。 一縷(いちる) 望 @itirunonozomi
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