BGM Maker
阿誰青芭
BGM Maker
男は一人、静かな部屋の中で曲を作っていた。
誰かの人生を色鮮やかにする、そんなBGMを作っていた。
ドラマやアニメの中では登場人物たちの感情や状況に合わせたBGMが流れている。それは意識しなければ気づかない人もいるだろうが、見る人を物語の世界へと引き込む力を持っている。いわば、縁の下の力持ちというやつだ。
しかし、現実世界のBGMは必ずしも「私」に合ったものが流れてくるわけではない。
路頭に迷い、自分に絶望している人には未来への希望を謳う歌を。
長年の恋心が実った人には捨てられた女の未練の歌を。
覚悟を決めた人には頭の悪い歌詞のバカみたいな歌を。
自殺を図ろうとする人には命への感謝の歌を。
BGMは残酷だ。
「私」に合ったBGMが流れていると、まるで主人公にでもなったかのような気持ちになる。
「私」に合わないBGMが流れていると、自分はあくまでモブなのだと思い知らされる。
だから男はBGMに取り憑かれた。
普段は流れていることを気にも留めない、だがふとした時に耳に飛び込んでくる。
それがどういうものかは聞いてみないとわからない。
BGMは人に勇気を与えるかもしれない、一方で誰かを絶望させているかもしれない。
だから男はBGMを作る、生きるためにBGMを作る。作る側でいる限りはBGMに殺されることはないのだから。
「今日は最低な気分だな!とびきり明るくてバカみたいなBGMでも作るか」
BGM Maker 阿誰青芭 @Asui-Aoba
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