第三章-2部 修正人以外の職業

 北の森に向かって走っていると、先の方に厳重な警備が行われている大きな門が現れた。

 俺は門の前で眠たそうにしている、少し年上の人物に走り寄った。

「何眠たそうにしているんだよ、ハル兄。」

 俺がそう声を掛けると、その人物は危険を察知したかのように、大きく飛び跳ねた。

「うわっ⁈誰だっ⁈」

 その人物はそう言い放ったが、俺の姿を見るや、納得したかのように頷いた。

「なんだ..ベルだったか。急に驚かすなよ〜。」

「いやいや、一応ハル兄は俺の兄なんだから、それらしく振舞ってもらわないと困るんだよ。」

 俺が少し嫌味っぽく返すと、ハル兄は正論を突き通され、半ば苦笑する。

「それはそうと、そんな嫌味を言いに来るためにここまで来たのか?」

 ハル兄にいきなり本題を出されて、少し驚いたが、俺は素直に言おうとする。

「実は成人の儀式で、特別職を授かったんだけど、その職業について大賢者さんに聞いたら、大賢者さんの弟さんの職業で、大賢者さんと同じくらいの強さを持つものらしいから、一度北の森で試したくなったんだ。」

「んなっ⁉︎お前特別職を授かったのかよ!」

 俺がここに来た目的を話すと、ハル兄は俺が特別職を授かったことについて驚いた。

「せっかく俺が特別職の<守護騎士>を授かったっていうのに、<大賢者>と同じくらいの強さの職業を授かるなんてなぁ。」

「まぁ、運が良かっただけだよ。」

 ハル兄は前まで特別職を自慢してきたが、俺が特別職を授かり、それもハル兄より強いものを授かったので、少し残念そうに見える。

「まぁ、とりあえず衛士長のおっさんに話してくるから、その辺で待っといて。」

「あっ..ハル兄ありがとう!」

 ハル兄は俺の返事を聞くや否や、門の隣に併設されている詰所に入って行った。

「うわぁぁぁっっ‼︎」

 少し待っていると門の外側から、ハル兄ではない他の衛士の悲鳴が聞こえてきた。

 何事か⁉︎と俺は驚くとすぐに答えが返ってきた。

「南の魔物が襲って来たぞー‼︎」

 その言葉を聞き、俺は驚いた。

 何故なら、この魔の森の中で最も危険である場所は南の森であるからである。

 こっちの森とは比べものにならないものなので、ここを任されている人にとっては、月とスッポン(先々代の修正人の記憶から引用)のような実力差があるので、この知らせを聞いた衛士達からは戸惑いの声が聞こえて来る。

「ちょっくら、殺ってこようかな〜」

 隣から軽々しい言葉が聞こえて来たので、驚いてそちらを見ると、そこには眠たそうなハル兄が立っていた。

「ハル兄、そんなに余裕そうにしていて大丈夫なの?」

「全然大丈夫だってば〜。こう見えても南の森での戦闘経験は豊富なんだよ。」

 俺が少し心配して聞いたが、余計なお世話だったようだ。

「ほんじゃ、行って来るから大人しく待っとけよ。終わったら森ん中に入れてやるからな。」

 ハル兄はそう言い放ち、職業に似合う鎧と大きめな剣を持って、門の外に走って行った。

 その後ろ姿を見ながら、俺はどうにか戦闘を見ることは出来ないかと模索していると、

<修正人>以外の職業である<影の支配者>という職業の能力に、影を通じて感覚を共有することが出来るものがある。

「そうだ、これを試してみよう!」

 俺はこの能力の存在に気付き、ついつい声を上げてしまった。

 そう言いつつ、俺は近くに生えていた木に体を預け、門の影に目をやった。

 そして、そこを見つめながら<影の支配者>の能力<影伝い>を使用した。

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