第二章-3部 修正人の能力
大賢者さんに連れられて、俺とレイナは幼い頃に数回しか入った事がない大賢者さんの家の中に入る。
入ると、外から見ても考えられない大きさの空間が広がっており(大賢者さんの能力の影響だと思うが)、そこには古びた本がたくさん並んでいる本棚や、大賢者さんの趣味である薬材の研究に使われる道具などが置かれている。
部屋の中央には、おそらく客人用の豪華な椅子や机が置かれている。
「あそこに座っていなさい。わしは飲み物を取ってくるからの。」
大賢者さんは、先程見ていた椅子に向かって、指を指しながらそう言った。
大賢者さんが飲み物を取りに行っている間に、俺とレイナは椅子に腰掛けながら、先程の大賢者さんの反応について語り合う。
「ねえ、お兄ちゃん。さっきのお爺さんの反応って、相当深刻な話なのかな?」
座ると同時にレイナが聞いてきた。
「大賢者さんがあんな風に驚くのは見たことがないから、多分そうだと思う。」
俺がこう返すと、レイナはやはりそうかと言うように頷いた。
そんなやりとりをしていると、大賢者さんが飲み物を持ってこちらに歩み寄って来た。
そして、俺達の前に置かれている机の上に飲み物を置くと、俺達があえて座らなかった豪華な椅子に座ると、真剣な顔をしてこちらを向いた。
「ベルクリフよ、早速だがお主が授かった職業は、わしの弟が授かった職業なんじゃ。」
大賢者さんは、座ると途端に凄い事を言った。
「えっ⁈大賢者さんに弟がいたんですか⁈」
俺は弟さんと同じ職業だということより、大賢者さんに弟がいたことに驚いた。
「いやいや、そこに驚くのは意外なんじゃが。」
すかさず、大賢者さんはツッコんで来た。
「まぁ、それはよしとしてじゃ。お主授かった時に弟の記憶を得たと思うんじゃが、どうかの?」
大賢者さんは、ツッコんではくれたが、笑ってはくれなかったので、聞かれた事を答える事にした。
「それがですね、俺が授かった職業は<修正人>以外にも授かっているらしく、それらの職業の記憶と混ざっているっぽいんですよ。」
俺は、ここまで来るまでの間に、得た記憶を思い返そうとしても、複数の記憶が混ざっているので、中々記憶の整理が出来ない事を告げた。
「何と!お主、職業を複数授かったのか⁈それなら、今記憶を思い返すのは難しいじゃろうな。」
俺が、振り返る事が難しいと知った大賢者さんは、怒る事もなく納得してくれた。
「して、断片的には弟の記憶が読み取れるのじゃな?」
大賢者さんは、先程の俺の主張を踏まえて、弟さんについて聞いて来た。
「はい。少しだけなら分かります。」
俺がそう言うと、大賢者さんは机に乗りかかって、お願いして来た。
「それなら、分かる範囲だけでよいから、それだけでも教えてくれるかの⁉︎」
いつも大人しい印象の大賢者さんが、こんなにも興奮するところを見るのは初めてなので、俺は気圧される。
「えっと、分かる範囲では大賢者さんと過ごした子どもの頃の記憶と、大賢者さんと喧嘩をして、世界を巻き込んだことと、世界各国から目をつけられて隠れ住んでいたことと、隠れながら裏勢力を片付けていたことと、各国連合軍に包囲されて、結果捕まってしまい、公開処刑されたことが、今分かるところです。」
俺が、分かること全てを伝えると、最初は大賢者さんも知っている内容だったらしく、話を聞きながら頷いていたが、大賢者さんと別れた後の話には、流石に驚いてはいられないらしく、感嘆の声が何度か上がった。
「なるほどのぅ、そんな事があったのじゃな....。わしとの喧嘩の記憶が見れるということは、この<大賢者>の職業と同等の戦闘能力を得たということでもあるからのぉ。」
俺はその事を聞き、記憶の中にある喧嘩の際の、<修正人>の戦闘能力には疑いがあったのだが、大賢者さんが認めるという事は、本当にそうなのだと確信できた。
「大賢者さんと匹敵する戦闘能力があるって事は、俺も大賢者さんみたく国から危険視されるのですか?」
俺は、大賢者さんの話によって確信を持ったことにより、同時に大賢者さんと同じように国から狙われる事になるかもしれないと不安が襲って来た。
「大丈夫じゃよ。この村は外界から半ば隔絶されておるから、この村に内通者がいない限り大丈夫じゃよ。」
俺はこの事を聞き、“内通者”なんてこの村にはいないだろと思った。
何故なら、この村に来るには国から追放や厄介視されたり、迫害されたりした特別職の人や、それほどの実力者でないとたどり着けないからだ。
俺はそう思い、安心していると一瞬だけ視界がフラッシュバックして、村が燃え盛る様子が見えた気がしたが、気のせいだと思った。
これが現実になるまでの間だけは...。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます