色とりどりの若者達がやがて『核心』へと迫る、学園異能ファンタジー

15歳を迎えると誰の目にも見えるようになる『コア』。自分に合うコアを見つけてその身に宿すと、人は異能の力を得ることができる。
純粋な色のコアが手に入れば、きっと人生は薔薇色に染まると期待していた『丸岡仁』だったが、彼に宿ったコアは『ベージュ色』。あまりにも地味な色で、大した能力も発揮できそうにない。そんな状況の中で、コアを研究する名門校『弧亜学園』の入学試験へと挑む――。

『コア』という独自の設定をベースに、異能力を得た主人公や生徒達が、学校内で巻き起こる波乱へと飛び込んでいく姿を描いた、異能力バトル学園ファンタジーものでした。
主人公の宿した能力は地味で使えそうにない、けれど実は秘められた真の力があって……と、王道な内容だったと思います。明かされる真の色や能力は、よくよく考えれば予想できたり特筆して珍しいものではないのですが、良い意味で驚きがあり個性的だと感じました。
そして主人公の周囲を彩る登場人物達においても、個性的で魅力あるキャラが多いのは、学園モノである必要性が活かされていて良かったです。ライバル、ヒロイン、先輩、教師……。作品のボリュームに対する全体のキャラ数としては多くないですが、代わりにそれぞれの人物の描写が巧く掘り下げられており、強く印象に残りました。
特に、最初は傲岸不遜な天才俺様キャラとして登場する彼方壮がイチオシですね。序盤はかなり好き嫌いが分かれそうな性格ですが、敗北を知って挫折から立ち上がり、人間的にも大きく成長する姿は魅力的でした。あとコア監視員のココも、単なるマスコットキャラクターではなく終盤の盛り上げに大きく貢献し、個人的にはお気に入りです。

ただ、肝心の主人公の仁というキャラクター性が、他キャラに比べて弱かったり薄いのは勿体なかったです。
喜怒哀楽の感情やその発露が小さく、全体的に周囲からのアクションに対して受け身なのが、印象を薄めてしまっています。『地味なコアの色』ということで入試には圧倒的不利なのに、「それでも弧亜学園に入りたいんだ」という目的意識が、読者の方にまでは強く伝わってこなかったです。入学した後も何をしたいのか、どこが物語のゴールなのか曖昧なために、作品全体としての印象もフワフワしてしまっていました。

しかし終盤におけるラスボスの登場、次々に明かされる衝撃の真実、熱いラストバトルからの爽やかなエンディングと、クライマックスにおける盛り上がりは、他の作品に比べても頭ひとつ抜けていると感じました。これくらいの展開の起伏や読者を惹き付ける構成力を、序盤からも発揮していれば、評価は更に高まっていたと思います。

ですのでタイトルやあらすじやキャッチコピー、冒頭で気になった方には、是非とも最後まで読んで頂きたい作品です。「こういうジャンルの作品は好きだな」と感じた方は、きっと満足すると思います。