初めて幽霊を見た

青田 空ノ子

第1話 

 

 昨年の夏(2020年)公開された映画『事故物件 怖い間取り』

 映画は見てないが(このエッセイを書いた時点では)、その宣伝関連で初めて知った『大島てるの事故物件サイト』。


 いわゆる事故物件が地図でわかるという。

 事故物件のところには炎マークがついて、クリックするとそのコメントが見れるようになっている。

 ほうほう、こんなモノがあったのか。

 

 確かにこれから引っ越しとか考えてる人には、気になるサイトである。

 別に引っ越ししなくても、怪しいとことか、自分のご近所なんか調べてみたりするのじゃないだろうか。

 そしてご多分に漏れず、私も現住所を入力してやってみた。


 はいっ! 見なきゃ良かったぁ――っ!!


 なんと家のすぐ斜め2,3軒先のアパートに2つも炎があるじゃないかっ!!!

 滅茶苦茶ご近所さんだよっ、何があった?!

 内容を見ると2つともごく最近、変死があったって事。

 なんだよ、怖ぇよぉ~~~! ただの古いアパートとしか思ってなかったし、気が付かなかったよ。


 とはいえ、変死=怪死ではないわけで、必ずしも霊障が絡んでいるわけではない。

 特に噂は聞こえてこなかった。……ひとまず良かった。


 実はひょんなことから、ある霊能者さんに会って話をした。

 そこで例の近所の物件を聞いてみたところ、ただの変死? だったらしく

 霊障みたいなのはないとの事。

 おお、本当に良かった!


 それより驚いたのは、『あんた、少し霊感あるね』と言われたこと。

 なんですとっ?!

 このウン十年、そんなもの無いと思って過ごしていたのに、拙者にもちょっぴりあったんですか??

『ほんの少しね。出たり引っ込んだりして、波長が合ったときに視るんじゃない?』


 そう言われて真っ先に思い出したのは、今から3年ほど前、以前の会社近くでの事。

 多分服装からして夏だったと思う。


 会社帰りの夕方5時過ぎ、夏なのでまわりはまだ全然明るかった。

 今思えば逢魔が時の時間帯だったのだろう。

 この頃は介護と仕事で毎日疲れ気味で、仕事がひとまず終わった解放感もなく、 帰路をボーっと歩いていた。


 いつも通る道の1つで、気分に合わせて通ったり通らなかったりするような、大通りから1本裏手に入った住居とマンションのある通り。


 ふと、マンション前にぽっかり空いたコインパーキングに目を向けて、『えっ?』となった。

 パーキングの精算機にある雨避けというのかな、あの『 みたいな形をしていて、上辺が斜めになっている、鉄枠に防水マットを付けたアレです。(場所によって違うかも)

 多分2m以上の高さはあると思う。


 そこに子供が2人いた。

 その天辺の横棒に2人、鉄棒に座るように横並びに座って何か話をしていた。

 見たところ、2,3歳くらいと3,4歳くらいの小さな男の子。


 危ないなぁ~! 親は何してるんだ? と、真っ先に思った。

 だけどまわりを見まわしたが、誰もいない。

 駐車している車の中にも、誰もいない。

 大体、どうしてあんなとこにいるんだろう? 

 まさか子供自身が登れるわけないから、親か大人が乗せたのだろうけど無責任過ぎないか?


 そんなとこにいたら危ないからと、声をかけようかと思ったが、まさか自分で降りれないだろし、身長150㎝のピグミーな私では手が届かない。

 どうしようかなとしばし思った。

 男の子たちは私に目を向けることなく、ただ顔を向き合わせて話をしているだけだ。


 横顔からして子供らしい可愛いほっぺたした男の子たち。

 ハッキリと存在して見えていた。


 う~ん、誰か通ればわかるか、と私はそのまま立ち去ることにした。


 誰か通れば助けを求めることもしたかもしれない。

 普通なら事故に繋がるのだから、ここは人を呼ぶなり、警察に通報するなりするはずなのに、なぜか不思議な光景という感覚が強かった。


 もしかすると私の中の何かが、ストップをかけたのかもしれない。

 これ以上深入りするなと。


 それから何度も通ったけど、もちろんその子たちはもう見なかった。

 何か事故があったという話も聞かないので、たまに思い出すだけで普段は忘れてた。


『見え方としては、映画『シックスセンス』が一番近いかな』

 そう聞いた。

 透けるわけでもなく、もちろん足が無いわけでもなく、生きた人と同じように見えるそうだ。

 だからもしかすると気が付かないうちに、他にも視ているのかもしれない。

 そんな私みたいに自覚のない人は少なくないのだ。


 だからあの時、声をかけなくて結果的には良かった。下手について来られても困るから。

 そういう子はいずれ、使いのヒトが連れてってくれるそうなので、ちょっと安心した。


 で、それもあっての『大島てる』サイトである。


 あったっ‼

 そのパーキングではないが、目の前の大きなマンションに2つ炎が。

『告知事項あり』(不動産情報)とある。


 ここは私が近くの会社に勤め始めてから建てられた、たしか10年くらいしか経ってないマンションだ。

 大きくて部屋数も凄いから、何かある確率も高いかもしれないが、『告知義務』ってなんだよ?!

 やっぱり心理的瑕疵とかいうヤツなのか?

 私が視た男の子も2人という数が気になる……。


 それに後で知ったが、事故物件は基本告知義務があるが、一度更地にしてしまって『駐車場』にすると、その義務が無くなってしまうらしい。

 実際にその手のやり方が多く行われているそうだ。


 駐車場……というところに、つい引っかかってしまった。


 とまあ、不安を煽ってしまったが、炎マークがあってもウチの近所のように必ずしも心霊物件とは限らないですから。

 それに狭い日本、古今東西、もう人死がなかった場所なんか存在しないし、日本は八百万の神様の国、逆に神様の方が多いかもしれないよ?


 とはいえ、やはり住むところは気になりますね。

 これから引っ越しなどで気になる人は参考までにチェックして、あとは不動産屋さんにちゃんと聞きましょう。

 一度人が住んだりすると告知義務が消えちゃうから、ニ番目の人には話さなくていいらしいので、こちらから聞かないと教えてくれない可能性大です。


 あとは第一印象。これ大事!

 家賃、駅から何分、近隣にスーパーや病院があるかどうかなども必要だけど、やっぱり家との相性も本当に大切。

 

 こればかりは占いで調べるとかではなく、実際に現地でその空間が落ち着くか落ち着かないか、余計な力は抜いて感じるしかないんですが。

 とりあえず納得して安心して住みましょう。

 


 さて話がこれだけじゃアレなので、人から聞いた話を簡単に2つ。


 1つは以前の会社にいた同僚から聞いた話。

 彼女はここに来る前は、自衛隊にいたので『軍曹』と呼ばれていた。

 名前はT橋。今は結婚して変わっている。


 その軍曹が自衛隊にいた頃のある日の夜間演習での出来事。

 富士山は樹海で真夜中訓練していたそうな。


 真っ暗な中、月夜の明かりだけを頼りにあの森の中で行動する最中、彼女は仲間を見失った。


 キョロキョロ探していると、離れたところにぼんやり人型をした白い影が見えた。

 その時は何故白っぽいか考えなかったようだ。

 みんなはカーキの迷彩柄なのに。

 それについて行こうとした軍曹。


「T橋っ! どこ行く気だーっ、T橋ーっ!」

 全然違う方向から班長の声がした。

 振り返ると班長らしい人影がこっちに手を振っている。

 あらためて前方見ると白い人影は消えていた。


 あの時そのままついて行ったらどうなっていたのか。


 ただ、彼女はある神社でも"声”を聴いたらしい。

 どんな? と聞いたのだが、思い出したくないと怖がっていた。

 たびたび何かしら見たり聞いたりしているのだろう。

 そう、多少人は結構いるようだ。


 もう1つ、これは初めて勤めた会社で聞いた話。

 そこは海外ブランドのバッグや財布などを主に、ライセンス契約して、製造・販売している会社だった。

 事業柄、海外のデザイナーさんやバイヤーさんが時々やってくる。

 そういう人達は、一癖というか個性が強い人が多い気がする。


 そんな人達の1人、フランス人のスーパーバイヤー、P氏の話。


 P氏は当時、ガタイ良く太った白髭のサンタクロースのような初老の紳士だった。

 ゲイで気さくでお金持ちで、大きな屋敷に住んでいるらしい。

 お屋敷は中世の頃から残っている、とても古い建物で、広い居間のシャンデリアは当時のままのもの。 

 蝋燭を灯してつけるのだとか。お洒落ですなぁ。


 その古き歴史ある居間に、明け方前 そっと現れるのだそうだ。

 窓から差し込む月明りに照らされて、薄っすらと部屋の内部が見えるような時に、いつの間にか床に棺桶が置かれている。

 中には古めかしいドレスを着た女性が、横たわっている。

 ただそれだけだそうだ。


 どうもその屋敷は、あのルイ十何世(聞いたけど忘れた)の愛人が暮らしていた屋敷だとか。

 では彼女なのか? それは結局不明なようだ。


 自分の家に時たまとはいえ、そんな現象があって気味悪くないのかと思ったが、別に悪さするわけでもないので、そのままにしているらしい。


 さすがP氏 肝っ玉も太いようだ。

 もしかするといても当たり前、そんな文化や感性の違いがあるのかもしれない。



 霊感があると言われてそう言えばと、思い当たる事は考えれば色々あるのだけど

まあハッキリ見えたのはこれが多分初めてだと思う。


 実は高校の多感な頃、夜 家の勝手口前の裏庭で怖い声が聞こえて、数日夢で悩まされた事とかはあった。

 この時は霊感の強い友達に助けてもらって、次の日からあっさり解消した。


 まあ夢だと言えば夢なので、一緒にしていいかはわからないが、多分私は

耳で聞こえるタイプだったのかもしれないと思う。

 振り返っても誰もいないし、テレビではないらしい事もあったので。

 そんな話や夢の話はいつか気が向いたら、話すことがあるかもしれない。


 という訳で、ここまで読んでいただきありがとうございました。

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