毎度ながら創作の方が行き詰っているので、こんな関係ないことを呟きます。
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なんだか最近テレビのニュースをつければ
『闇バイト』『大谷さん』『詐欺』『SNSホワイト案件(嘘つけ)』『ォオタニィさ~ん』『強盗殺人』……。
もう大谷さんでもこの物騒な雰囲気が払えない。
そんな時はアニマルセラピーじゃ。
で、ふと思い出した昔の案件。
エッセイでもチラッと書いたが、昔住んでいたところは下町の長屋アパートだった。
トイレは今や懐かしき上がり框(かまち)式の和風トイレで、床はタイル敷き、水の入ったタンクは頭の辺りどころか遥か天井近くにあり、そこから長く垂れた鎖を引っ張って水を流すタイプだった。
立ち上がるとちょうど顔の高さに横開きの木枠のガラス戸。これのおかげで外からの陽光が入るので昼は電気をつけずとも、薄明るかったりした。
すぐ外側は裏庭の細い通路だが、住民以外通る人もおらず、万一外から覗こうとしても、外からだと段差があるためまず難しい高さだった。
が、問題なのはその壁の一番下、つまり便器と同じ高さにも同じく横開きの細長い窓が取り付けてあった。
おそらく臭い取り用なのだろうが、いくら金隠しで隠せるとはいえ、この位置、子供でも覗けるのだが……。
で、そんな心配を薄々していたら、出たのだ、その覗きが。
ある日、トイレに行った母がすぐに戻って来て私を呼んだ。
「来てごらん、可愛いのがいるよ~」
トイレになにカワイイのがいるというのだ。まさかカマドウマの子供とか言うんじゃないだろうな。
なんて疑いながら狭いトイレ―― ヒト一人入れる窪みのように奥まった空間の左横に戸がついている構造――に母と入れ違いに覗くと。
一瞬分からなかったが、なんと下の戸口から仔猫がこちらを覗いていた。
「え、なに?? 何してんの?」
二度見したがやはり仔猫。白地のおでこに茶色の筋があり、白い小さな丸っとした前脚でしっかり縁を掴みながら顎を乗せている。
慌てて裏口から出ると、右手の我が家のトイレの小窓に背伸びして覗き込んでいる仔猫の横姿。思い切り伸ばして踏ん張ってる小さな足に、三毛柄の小さな背中。
「お~い、何してくれちゃってんの、君」
声を掛けたが、逃げるどころか振り返りもしない。こちらに目も向けない真剣さ。
近づいてもピクリとも動かないし、思わず生きてるんかと思ったが、良く見るとちゃんと目が動いてるし、もうトイレをガン見に夢中な様子。
再び家の中に戻ってトイレ側から見ると、やはり目が合うのに全くこちらに注意する様子なし。
めっちゃ可愛いんだけど、ここでうっかり触ったらいけないような気がして、そっと傍で見ていた。(写真撮っておけば良かった~💧)
しばらくしてやっと気が済んだのか、地面に四つ足を着くとトテトテと裏木戸(トタン板)の方に去っていった。
裏木戸は通常鍵が掛かっていて、人は通れない状態だが、下は子供の頭位の隙間が空いている。猫は通り放題だ。
あとでわかったが、その仔猫は我が家の斜め右裏手側にあるブリキ屋さんちのミーちゃんだった。
つまりその裏木戸の左横の家。
おそらく幼いながらミーちゃんの縄張りだったのかもしれない。
我が家のトイレが他所の家の猫の縄張りってのも、なんだかくすぐったい気もするが、おかしいのは母も同じで以前にも覗かれたことがあったのだとか。
それでシッシッと手で払うのだけど、ちっとも退かないので、仕方なく見つめ合いながら用足ししていたのだとか。
いや、それ、始めから戸を閉めとけば済む話じゃない?
終わってから開ければいいのに、何故にする前に開ける??
そこのところは本人なりに考えがあるようだったが、よく分からん。
けれどそのおかげでまあ可愛いものが見れた。
その後ミーちゃんは、成猫になるまでたまに覗きに来ていたようである。
子供の時だけの特別な好奇心なのかもしれないなあ。
あの時のミーちゃんの好奇心一杯に見開いた目と真剣な顔が良き思い出である。
ミーちゃんのエピソードは他にもあるのだが、それはまたいずれ。