第八章の⑯:あっという間に1年

ずいぶんと筆を執っていないので、頭も腐ってしまったかもしれない。

新しい職場に入社して、5月で一年。今が3月末、ほぼ11か月を経過した計算になる。

気が付けばあっという間で、私もこの間一つ年を取り、アラフィフになってしまった。

まだまだ若いつもりが体もガタが来ており、先日の大腸がん検診では生まれて初めて便潜血の陽性反応が出るという衝撃の結果に・・・

『遂に私も・・・』と言う思い。そして、少し見えづらくなってきた目、確実に老いは忍び寄ってきている。

実際の所、私が40代を迎えている等と言うこと自体が、若い時は全く想像もできなかった。

身体は健康で自在に動くままであり、衰えを知らぬ体で死ぬまで生きられるのだ・・・と勝手に思い込んでいたが、気が付けばアラフィフ。そして急に襲い掛かってきた体の変調。


自分がいつまでも若いままでいられるという思いとは裏腹に、老化の影は忍び寄り、確実に老いと死が近づいてきている。

願わくば子供が成人し孫が見られるまでは何とか頭もしっかりしたまま健康に生きていければなぁ・・・と考えている。

煙草に酒、脂っこい食事が大好きな私にそれは難しいのかもしれないが・・・


少なくとも、健康診断だけは真面目に受けて病気の早期発見と予防を心掛けていこうと思う。

まぁ、おっさんの不健康自慢を読んでも面白くないだろうし、少し季節の話でも・・・


毎年のことながらこの時期は桜が咲く。当たり前だが桜が咲く。桜の前には梅の花も咲き良い香りを漂わせてくれる。

春が近いという事は素晴らしい事だ。殺風景だった景色に緑の色どりが塗りたくられ、花の色どりが季節に興を添える。

間もなく満開になる桜の花を見ながら、毎年この景色を眺めることができることをこの時期のささやかな喜びと私はしている。


・・・あと何回?・・・


そう、後幾たびこの景色を見られるのか?私が最後に見る桜はいつの事か?老いが忍び寄る中そんなことを考えながら、先日子供が小学校を卒業したことに思いを馳せる。赤子であった我が子が、気が付けばランドセルを置き去りにして制服で4月から中学校に通うのだ。

時の流れはゆっくりかと思えば激流の様であり、その間に世の中と私自身に様々な変化があった。

つらい事、面白くない事、嫌な事、様々なことが人生を駆け巡り、全てが過去の追憶へと過ぎ去っていく。

そして『現在』は通り過ぎて言った瞬間に全てが『過去』となり、二度とそこに手を伸ばしても触れることも辿り着くこともできない。

そして、いずれは迎える最後の刻が『未来』としてどのような姿で私を迎えてくれるのだろうか?それは私にもわからない。


ただ、もし叶うならば私が最後の時を迎えるときに『私は笑って周りの人は泣いている』とよく言われるような最期を迎えたいものだ。


だが、それと相反して『ずっと長生きしたい、死にたくない、老いが怖い』と言う思いも確かに存在する。私自身が欲深く俗物すぎるが故だろう、金や女と言った俗世的な欲望は存分にあり、それを私自身が飽きるまでは死にたくない・・・と思っている自分がいる。

随分と下世話な話ではあるが、私自身が聖人君子でもない以上まぁ仕方のない事だろう。


様々な思いはこの年になって交錯するが、少なくとも今の段階ではまぁ人並みの生活を送ることができている現状に感謝だろう。

いつまで健康でいられるかわからない。いつまで楽しく生きていられるかはわからない。そんな何一つ先のことなど見えない人生ではあるが、この年になって改めて悔いのない人生を送りたいとは考えている。


もはや20代の若さは望むべくもないだろう。だが、二十歳の若造の時とは違い20年以上歩んで来た人生は私に老獪さと経験を蓄積させてくれた。

これからはこの積み上げられた物を大切に、折り返し地点に到達した人生・・・楽しんでいこうと思う。


それではまた。

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