1冊目 『復活の日』(小松左京/著)

 もちろん、この本です。


 『復活の日』(小松左京/著 KADOKAWA 角川文庫 こ2-14)

 ISBN→978-4-04-106581-5


 その昔、テレビで放映された映画版のラストの方をちょっとだけ観た記憶があるのです。

 ストーリーとかさっぱりわからないのですが、主演の草刈正雄さん(若い!)がボロボロのホームレス状態でどこかから帰ってくる場面が強烈に印象に残っていまして。

 それがSFの巨匠・小松左京原作の『復活の日』で、「新型のウイルスかなんかで人類が滅ぶ話」だということは何となくは知っていたのですが、実はちゃんと読んだのは今回が初めてです。


 「……小松左京先生、マジすげえ」


 ”ただの風邪”が、人類を滅ぼすこの圧倒的なリアリティ。


「この作品がコロナ禍を予言していた!」 とよく言われているようですが、むしろ「現実の方が巨匠の想像/創造力に周回遅れで追いついた」感じ。

 この作品が書かれた1964年当時なら、これほどの速さで世界中に感染が拡大することはなかったでしょう。

 けれど、多くの人々が海を越えて簡単に移動できる今ならそれが可能なわけで。

 医学や感染症対策はさすがに現代の方が進歩しているけれど(まさかこんなに早く有効なワクチンが完成するとは思いませんでしたが)、状況は2009年に新型インフルエンザが日本上陸したときよりも、さらに現実が作品世界に近づいている気がします。

 感染症の専門家と医療関係者、公衆衛生の現場のひとたちの現場の努力のおかげでなんとか引き離しているけれど、圧倒的な感染力に追いつかれてしまったら……


 うわあああああああああ(悲鳴)。


 ふつうは生き延びる方に感情移入するのですが。

 はじめてですよ。こんなに生き残りたくないと思うディストピアは……


 異世界ファンタジーは文字通り現在とは異なる世界の物語異世界ファンタジーだけど、SF は現在と地続きだったりするのことがあるのであなどれません。


 あと、タバコとか、覚醒剤とか、ジェンダーの問題とか、現在の感覚で読むとちょっと引いてしまうところがあるのですが、それが戦争を経験した世代が現役だったころの話だと思うと、当たり前とか、常識とか、世界は少しずつだけど確実に変わっていて、気がつくとまったく別のものになって後からは想像もできなくなるものだと思いました。


 新しい作品もいいけど、古い作品を読んでみると、意外な発見があるものです。


 てか、基地の女性の扱いは二重にひどいので、感染が落ち着いたら早くなんとかして欲しい。職場の男女比は同数でお願いします。


 文庫版のあとがきによれば、『復活の日』が映画化したのは初版が発行されてから16年後の1980年。テレビ放映されたとすればその1年後ぐらいだから、40年目にしてあのラストシーンの意味、主人公がボロボロだった理由と、”帰ってきたこと”の意味がようやく理解できたのでした。


 やっぱ、すげえや!


 この作品は巨匠の代表作かつ話題の本なので、いきつけの本屋さんで平積みにしてあったのを普通に買えましたが(もちろん初版ではなく文庫の改版)、そうでない本は半世紀も本屋さんで待ってはくれません。

 下手をすれば発売から三か月……最速だと二週間で書店の店頭から姿を消してしまうことがあるので、気になる本があったらすぐに買うのが正解です。

 ちょっとでも気になる本があったらすぐ買おう!



 ところで、今『さよならジュピター』、買おうかどうか、迷っているのですが……

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積ん読の山高く 灰色山穏 @yama03

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