キャラクターの個性が光る、楽しいお話

「星霊」と呼ばれる、超常的な存在。彼らは惑星に生き物セットなるものを撒いて、自分を小さく分離させた「魂」を分け与えて観察しました。
地球もまた、そうして育てられた箱庭のひとつです。

やがて生き物は自律進化の果てに、魂をより効果的に運用できる「人」という種を生み出します。人は急速に文明を発展させて、そして急速に数を増やしますが……しかしどの惑星でもある一定数に達すると必ず、戦争や自然破壊などで自滅してしまうのです。

星霊は生き物に分けた魂を、個体が滅する際に回収します。それらは経験値として星霊に還元されるようで、惑星に増えすぎて収拾がつかなくなった魂を回収するのもまた、彼らの仕事なのです。
そんなサイクルを繰り返す中で起きた、ちょっとした「反乱」がこの作品の始まり。

「別の惑星で発生した地球の記憶をもつ現地人が、地球の文明の力で創成します」
これがお話の表題なんですが、しかし主人公のアキ含めた一行のマイペースなこと! (笑)
良くも悪くも欲望(特に食欲)に忠実で、争いを好まない平和主義者に見えて、やる時はヤルのです。

設計士、創造士、医療士など、それぞれに特化した地球の文明、記録、そして力を行使できるという役割が与えられています。
彼らの関係性はまるで、適材適所の人員が適切に配置された一つの会社です。しかも見ていて和むタイプのホワイト会社。

先住民である現地人や生物に対しては、やや蛮族のケがあるものの……いやまあ、やってること魔王だから仕方ないですね! 皆ひれ伏せば良いと思う!

物語を通して「永遠の課題」というか、普段気にしないように生きている事、あえて目を逸らしている事などに対する、問いかけのようなものを感じます。
深い問題提起も度々あるのですが、しかしキャラクター達が明るくのんびり、マイペースに生きているので重くならない。

言うべき事はハッキリ言うけど、不思議とカドが立たない人達といったところでしょうか。人たらししか居ないぞ!

何も考えずに読めるほど楽しくもあり、深い思考の海に沈みそうでもあり。
きっと、読む人によってガラリと印象の変わる物語だと思います。
参考までに私の読後感は、「こんな会社で働きたいけど、私にできる役割ってなんだろうか」でした。
取り急ぎ、自己定義という名の履歴書と向き合わねばなりません。最高の物語でした。

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