「いちご姫と呼ばれて♡」ゲームに転移したのはヒロインと悪役令嬢でした。

星あんず

第1話

「とうとう最終イベントにきたぁーー!! よっしゃー!」


 私の今の一押しゲーム『いちご姫と呼ばれて♡』をこれまで2回攻略。隠れキャラを出すためには、今回攻略すれば、次で出てくると言われている。


 3回目のゲーム攻略を3日連休+1日有給を使い、4日目にして最終イベントに到達できた。これで、明日からすっきりと仕事できるぞー


 私は恋愛ゲームが大好物。まぁ、リアは彼氏いない歴〇年だけど・・・

 まぁ、こんな汚い部屋に彼氏なんて呼べるはずもないしね。


 3日間ゲームに没頭してたのもあるけど、お世辞にもきれい、片付いていると言えない。コンビニでお弁当、お菓子、パンなんかを大量に買ってきて、トイレ以外ほとんど動かず、ひたすらお尻にタコができるくらいゲームを進めていた。


 最終イベントはじっくりと堪能するぞー

 何人たりとも邪魔はさせぬ!

(邪魔する人もいないんだけどね・・・・・・)


王立学園卒業パーティ前の「階段ドン」からパーティの断罪イベントに一気に入る。



・・・・・・という前にトイレにいっとこー・・・・・・


 立ち上がり、1歩足を進めたとたん、食べた菓子パンの空き袋に足を取られて思いっきり転んだ。


「イターッー」

 テーブルの角に頭を思いっきり打ち付けたっぽい。

 痛みで目の前が一瞬真っ暗闇になった。




「イタターッ」

 気が付くと、私は見たことのある階段の踊り場に倒れていた。


 ふと、見上げると、金髪のドリルロールのきつめの美少女が驚いた顔でオロオロしながら私を見下ろしているのを見た。

 何これ??? 私はまた、意識を失った。


「気が付いた? ここは学園の医務室よ」

 目を開けると、さっきの金髪ドリルロール少女が心配そうな顔をして様子をうかがっている。


「あれ? わたし・・・・・・」

「あのね、ラズィさん、ごめんなさいね」

(ラズィ? いちご姫のヒロインの名前・・・・・・


 え? あたし「いちご姫と呼ばれて♡」のヒロインに転移した?


 ってことは、ストロベリーブロンドのフワフワヘアにいちご色のたれ目になったってこと?


 そういえば、目の前のきつめの美少女は、悪役令嬢のイザベラ・シストル!)


「あの、私、階段から突き飛ばされたんですよね?」


「そうだけど、私が突き落としたんだけど、私じゃないの!!!

 私はやっていないのよぉー   じゃなくって

 私がやったんだけど、それは私じゃなくって・・・・・・

 あーっ なんていったらいいの!! 私はやってないのよぉー 

 私は私じゃないんだからぁー」


 ・・・・・・!!!


「もしかしたら、イザベラさんもゲームの中に転移しちゃったっていうヤツですか?」


 イザベラさんは目をまん丸くして、私の顔をまじまじと見ている。

「あなたも??? あなたも『いちご姫と呼ばれて♡』を遊んでた??」


 私は、大きくこっくりとうなずいた。

 2人ともじーっとお互いの顔を見つめ合っている。

 ここに誰かが入ってきたら、きっと誤解されるに決まってる!!  と、ふとそんな考えが頭をよぎる。



「これって最終イベントの始まりですねー」

「ですよねー・・・・・・」



「ラズィ~~~!!! 心配で、心配で   

 あーっ よかった!! 目が覚めたんだね? 大けがしてないかい?」


 2人で考え込んでると、勢いよくドアを開ける音がして、ラズィのベッドに金髪アイスブルーの瞳のイケメン少年が飛び込んできた。

(この人知ってる! ベンジャミン・ロマネスコ第1王子。 攻略対象その1)


「ベンジャミン様、大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません」


「あー ラズィ 君の笑顔を見れて僕は安心したよ。

 おや? イザベラ嬢。 ラズィを突き飛ばした君がどうしてここにいる?

 君がラズィを階段から突き飛ばしたのは複数の生徒が見ている。

 今回の君の行為については、目に余る。婚約者ではあるけれど、卒業パーティのエスコートは期待しないでくれたまえ。僕は、君が僕の婚約者にはふさわしくないと思っているから・・・・・・」



「あ、あの……ベンジャミン王子、まだフラフラするので、のちほど・・・・・・」


「あぁー ラズィ、悪かった。君が具合悪いのに気づかないなんて! 

 イザベラ嬢、いつまでラズィに嫌がらせしているのかい? 君も帰ってくれないか?」


 ベンジャミン王子はイザベラに振り向きもせず声を発した。イザベラは今にも泣きそうな顔になっている。


 私は、声を出さずに、「後で、寮の部屋に来て」とイザベラに伝えると、イザベラはコクンとうなづき

「王子、わたくし、失礼いたします。ラズィ様、それではお暇いたします」と軽く会釈をして、部屋を出て行った。





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