第4話

 ちょうど水まきが終わった後だから、イザベラさんはグショグショになっていた。


「どうしよー  ラズィさん」


 イザベラさんは今にも泣きそうな顔になっている。

 畑はぐちゃぐちゃ、いちごつぶれちゃったよね・・・・・・

 これって、強制イベント??

 ゲーム恐るべし!


「私がロープを置きっぱなしにしてたのも悪いし、しょーがないよ。アハハ・・・・・・」

「また、私、悪役令嬢じゃないよぉ―― 何とかしなくっちゃ!!

そうだ! 摘めるいちごを全部摘んでいちごのコンポートを作るってどう?」


「いいアイディアだけど、キッチンなんてないよ。寮の厨房を借りるにしても、お砂糖とかもないし、それに私料理できないんだよねー」

「大丈夫だよ! イザベラのお部屋にメイドさんが簡単な軽食を作るキッチンがあるから、そこを使ったらいいよ。私こうみえても料理は得意だよ!」


「じゃぁ、お願いしようかな? そうと決まったら、誰も来ないうちにさっさといちごを摘んでしまおう! 赤いのだけだからね!」


 それから私とイザベラさんは、いちご摘みをがんばった。

 イザベラさんは摘んだいちごを入れたバケツを抱えて、汚れたドレスのまま、寮へと急いで戻っていった。 もう転ばないでね!




 その夜、イザベラさんはいちごのコンポートを瓶詰めにして持ってきてくれた。フワフワのパンケーキのおまけにつき。すごーく美味しかった!

「レモンと赤ワインも入れて煮たのよー」と自慢する。


 イザベラさんの話によると、その後が大変だったみたい。

 いきなり汚れたお嬢様がいちごをいっぱい持って帰ってくるやいなや、一度も入ったことのないキッチンでいちごのへたを取り出したから、メイドさんはアワアワしたらしい。

「お着替えをー!!」と叫ぶメイドさんを無視して、「へた取りは全部やったわ!」と自慢気に話す。

 やっぱ、このイジワル顔、自慢すると絵になるわー


 イザベラさんとは毎夜、卒業パーティの攻略を考えるが、いい案はちっとも浮かばない。もちろん、イザベラさんが嫌がらせをすることはなくなり、日中はあまり接触することがないようにしていた。


 ベンジャミン王子は、毎日のように花束を届けてくれる。寮の狭い部屋はお花屋さんが開けるくらいになった。でも、花瓶なんてないから、農園からバケツを借りてきた。お水変えたりするの大変だしかなりの重労働になる。香りもこれだけあるとキツイ。花びらは散ってくるしで、「軽く嫌がらせか?」と思えてしまう。


 お花いっぱいのプレゼントなんてよくあるけど、あんなので喜ぶのなんか嘘だよ!

 自分で全部やらなくっちゃならないのに、喜べるはずないじゃない。


 いちご畑の残りのいちごも全部収穫することができた。つぶれたいちごも全部イザベラさんに渡しちゃったけどね。

 つぶれたいちごは、ジャムにするって言ってたけど、コンポートとジャムって何が違うのか、私にはよくわからない。


 ところで、ゲームのラズィは、あのいちごをどうしたんだろうね?

 一人で全部食べたのかなぁ・・・・・・


 あぁ、いちご畑をイザベラに荒らされたからその心配はないか!

 さすが考えているよ。運営さん。


 そんな日を過ごしながら、とうとう断罪イベントのクライマックス、卒業パーティ当日となった。

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