第7話

 あれから卒業パーティは、滞りなく進んでいた。

(明日は、今日の出来事で噂が流れまくりになっているだろうけどね!)


 ベンジャミン王子は肩を落とし、あの場所から姿を消した。


 私とイザベラさんは、パーティ会場の片隅で反省会を開く。

「これでよかったの? イザベラさん、私は実家に帰るだけなんだけど……」


「よかったんじゃない? だって、ラズィさんとずっと一緒っていうのは、心強いのよ!

 転移者同士で、現代の知恵で領地開拓っていう夢もあるじゃない?」


 イザベラさん、ウキウキしてる。

 現代の知恵って言っても、何にもできない私には無理だわぁー


「それにしても、ベンジャミン王子には、ちょっとかわいそうなことしちゃったね」

「だよねー まさか王子が『ざまぁ』な結果に・・・何にも悪いことしてないのにねー」

 私とイザベラさんにとっては、少しだけ後味が悪い。


「でも、これからもラズィさんと一緒だったら楽しめるわ!

 明日、追放される準備してくるから、ベリー領ではよろしくね!」


 そう言って、イザベラさんは軽やかにパーティ会場を後にした。

 私も帰る準備をしよーって思って、やっと気づいた。


 ラズィの実家、ベリー領ってどこにあるの? どうやって行くの~~!?




 翌朝、ドアをドンドンする音で目が覚める。

「ラズィさん、ベリー領に行きましょう!!」

 ドアを開けるとニコニコしているイザベラさんがいた。


「早く顔を洗って! 馬車を準備したから一直線よ!」

 ラズィさん、きっとベリー領の行き方知らないと思ったから、シストル侯爵さんに最後のわがままって言って、馬車を準備してもらったんだよ」


 イザベラさん、得意顔 似合っています。


 短い間だったけど、学園生活、それなりに楽しかったよ!

 転移してきた場所にさよならを告げて、イザベラさんの馬車へ向かうことにした。



 学園の寮の前には、すごーく豪華な馬車が止まっていた。

 さすが侯爵家!


「ベリー領までは1週間くらいかかるらしいよ。のんびりと、観光もできるし、ちょっと楽しみになってきちゃった。王様ありがとーっていう気分だわ!」


 イザベラさんって、結構ポジティブなのねー


 最初の街には、夕方くらいに着くらしい。イザベラさんは途中で食べるお弁当のチェックに余念がない。


「おーい! 待ってくれー」


 馬車に乗り、出発しようとした時、後ろから声が聞こえた。


 ベンジャミン王子!!!


「僕もベリー領に連れてってくれないかい? 」


「「えぇぇぇぇえーっ!!!!」」

 秘密の会話ができなくなっちゃうじゃないよぉー


「ベリー領は何もないところと聞いております。ベンジャミン王子」

 イザベラさんが、悲しげに言う。


「僕のことは、ただベンジャミンとだけ呼んでくれ。

 父上から言われ、僕は気づいたんだ。もっと王国の隅々まで知らなければならないと!

 王国の最南端にあるベリー領で、僕は学ぶべきだと!!」


 そう言うと、ベンジャミン王子は爽やかな笑顔で、颯爽と馬車に乗り込んできた。


「君たち2人の旅の安全は、僕が命をかけて守るからね」 

 キラリン!              効果音が鳴る最高の笑顔だった。


 有無を言わせない強引さ。

 さすが、王子様だわぁーと、納得した。






 それから約1週間、私とイザベラさん、そしてベンジャミンさんの3人はベリー領へと向かったのだ。

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