第6話

「ベンジャミンさまぁー」

 私は、ちょっとアホッぽく、ピンクのフリフワドレスで、ベンジャミン王子のもとへ出ることにした。


「ラズィ嬢 どうしたのだ? まだ君には声をかけていないのだが・・・・・・」

 王子はちょっと困ったように私を見る。公の場面では、上位の方が言葉をかけなければ、発言してはいけないのだ。


「さっきのイザベラさんのお話は少しちがいますぅ。イザベラさんは階段を踏み外そうとしたあたくしを助けてくれたんですぅ。医務室にいたイザベラさんとベンジャミンさまもお会いしたでしょ?」

「いや・・・そうだが・・・・・・」

 王子はちょっと困り顔になった。   よしっ!


「それに、いちごだって、いっぱいあって困っていたら、イザベラさんが泥だらけになるのも構わずに手伝ってくれたんですよぉ~ その上、長く食べられるようにってコンポートまで作ってくれて!! こんないい人いませんよぉ~」

「いや・・・いや、ラズィ嬢、君はイザベラ嬢に脅されているのではないか?」

 ちょっと立場の悪くなったベンジャミン王子! 巻き返したよね!?


「そんなことありません! いちご姫は、いつも愛と真心でハートをいっぱいにしなくちゃなりませんから! いちごに嘘は通用しません! 赤い実がなったのが何よりの証拠ですっ♡」

 決まったぁー

 イザベラさんのほうを見て、サムアップする。


 ベンジャミン王子、それに王様とお妃様は、口をぽかんと半開きにして、私を見てる。

 みんなどこか別の世界に旅立ってしまったようです。


「ベンジャミン様、正直に申し上げます。わたくしイザベラは、ラズィ様に知識の大切さを知っていただくために教科書を破いたり、きれいにしてさしあげようと頭からお水をかけたこともございました。それもすべて、ラズィ様がわたくしの真心のお友だちだからでございます。

 わたくし、ラズィさんのいちごをいただきましたら、目覚めたのです。

 愛と真心に!」


 イザベラさん、唐草模様のドレスをフワフワさせて私の隣りに来たけど、何言ってるかよくわかりません。



「ベンジャミンよ。なかなか個性的なご令嬢と親しくしておるのだなー」

 半開きの口をピシッと閉めて、王様はなんとかこの世に戻ってきたらしい。


「ベンジャミン、希望どおり、イザベラ・シストル侯爵令嬢との婚約を破棄することを許そう」

「父上、いえ、国王よ。私の申し出を受諾いただき感謝申し上げます。

 それでは、改めてここに、ラズィ・ベリー男爵令嬢をご紹介させていただくことをお許し願います」


 王様はベンジャミン王子の言葉に首を振り、片手をあげて次の言葉を制した。

 両手じゃなくてよかったよー お手上げってね!!


「聞けば、イザベラ嬢とラズィ嬢は真心の友人というではないか。ベンジャミンから聞いていたことと事実は異なるようだ。

 よって、ここに、イザベラ・シストルならびにラズィ・ベリーの両名は、真の友情を深めることをここに誓い、2人の友情を育んだ『いちご』をこれからも育てることを命令する。2人ともベリー男爵領で思う存分いちごを育てるがよい。王命である」


 とりあえず、深くお辞儀をする。

 ん? 私は実家に帰れってことで、イザベラさんは……ベリー領に追放ってこと?

 ベリー領って受刑者を強制労働させるようなところなのぉー??


「ベンジャミンよ。私は王として、そなたをこの国を治めるのにふさわしい者と、これまでは評価していた。しかしながら、今回のそなたの起こした出来事で、私は王としても、まだ未熟であったと思うぞ。

 今回の一件において、そなたは私以上に未熟であることが判明した。よって、ベンジャミン・ロマネスコ第1王子の王位継承権をはく奪し、王城より追放する。市井に紛れて研鑽を積むがよい! 王命である」


 えぇぇぇーっ!?

 ベンジャミン王子が、「ざまぁ」になった??

 



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