第9話

 せまいテーブルに6人分の夕ご飯が並ぶ。

 野ウサギのシチューにライ麦パンみたいな硬めのパン。ジャガイモにラクレットチーズをかけて食べる。

 きっと、おもてなしの料理なんだと思う。あったかい味がする。おいしい!

 ベンジャミンさんもイザベラさんもニコニコして食べてる。


「今日、摘み立ての自慢のいちごだよぉー。これはベリー領でしか食べられないからね!」

 お父さんが、大粒のいちごを食卓に持ってきた。


 おぉぉぉおー! これは 千〇屋とかで見る、高級いちごに負けず劣らず輝いている。

 赤ちゃんの握りこぶし大の大きさで、一口食べるとジュワーッて果汁があふれてくる。

「王都でも、このようないちごは食べたことがない!」

 ベンジャミンさんが目を輝かせて食べている。


「そりゃぁそうだよぉー 私の品種改良の努力の賜物さぁー

でも、果肉が柔らかいから1日しか持たないし、輸送なんてしたら傷だらけになる。

取れる量も少ないから外には出せないんだよねぇー」

お父さんはちょっとしょんぼりしている。


「お父様、いちごのロマンを感じます!! ラズィからはいちごの愛と真心のすばらしさを教えていただきました。私は、ここでお父様からいちごのロマンを教えていただきたい!」

 なんか、ベンジャミンさん、意味不明なこと言ってるんですけど・・・・・・


「おぉぉおお! 王子様!! お判りいただけましたかぁー!!! 

なんと素晴らしい日だ!! 

いちごのロマン語れる御仁にお会いすることができる日が来るとは!!

お母さん! 特別のいちご酒も出してくれないかい? 乾杯をしよー!!!」


お父さんとベンジャミンさんはいちごロマンで盛り上がっている。

ブルゥ兄ちゃんは、そのとなりでニコニコしながらいちご酒を飲んでいる。

(ブルゥ兄ちゃん、人畜無害決定!!)


「お父さんも、いちごの品種改良にばっかりじゃなくって、ちょっとでもベリー領にお金が入る方法を考えてくれてもいいんだけどねー。

 ベリー領はいちごジャムといちご酒を外に売るしか稼げないのに、いくらおいしくても売れないいちごを頑張って作ってもねぇー」

「おばさま、男なんてそんなもんですよぉー 

 女の苦労なんか、これっぽっちもわかっていないんです!

 浮気しないだけいいでしょー」

 イザベラさん、いちご酒の入ったコップをガンッとテーブルにたたきつけている。


 ちょっ! イザベラさん、あっちの世界でなんかあった?

 地 出てますよぉー!!!


 ベリー領の初日の夜は、大いに盛り上がった・・・・・・と思う。



 翌朝、リビングに降りると、お父さんとベンジャミンさんが、床でごろ寝している。


 ん? ってことは、ブルゥお兄ちゃんは自分の部屋で寝てるのかー 

 意外と、お兄ちゃん ちゃっかりしている。


 少しすると、イザベラさんが起きてきた。

「頭、イタイッ いちご酒で2日酔いとは・・・」


「おはようございます。イザベラ様! あのいちご酒は、度数が高いんですよ!」

 そう言って、お母さんが冷たいお水を渡した。

「でも、昨日はとっても楽しかったわぁ  いつもはお父さんのいちごの話ばっかり聞いているから、ちょっと うっぷんが溜まってたところだったの。

 これからとっても楽しくなりそぉで、ストローうれしくなっちゃう!」

 母、お前は、いくつだぁ!


「今日は、村の皆さんにいちご摘みをお願いしているから、摘み終わったいちごが届いたら、いちごジャムづくりを手伝って頂戴ね!

 ベリー領のいちごジャムはとってもおいしいのよぉー 」


 お母さんは、ウキウキして台所に戻っていった。


イザベラさんは、水を一気飲みした後、宣言した。

「私、決めた! ブルゥ兄さんと結婚する!!」

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