直感と思いきや、直観……って?
大創 淳
第三回 お題は「直観」
――そう。「直感」ではなく「直観」なの。そして僕は、颯爽と頭を抱える。
易しいはずはないの、お題に……わかってはいたの。ただ、第一回のお題も、第二回のお題も、〆切に間に合ったということで安心していた、しきっていた……
二度あることは三度あるではないけれど、
直感ということで……いけると思ったの。直感ということなら……よく見たら、直観なの。颯爽と調べる調べる調べる……それは様々な手段ではなくて、様々な検索で。
辞書は引かず、スマホの検索。
キーワードは「直観」……だ。湿った空気の午後三時。学園内。ウトウトと、芸術棟の三階の小部屋。脳に痺れを感じ、誘われる睡魔。コテン……と、カーペットへと。
冷たい感覚?
温かい感覚?
衣服を通して感じる硬さや温度。触れたものの感覚。何となく肌で感じるもの。
そうではなく、そうではなくて。
思い出したくない辛いこと。悲しかったこと。……いじめられていた頃。目を閉じるように、まだ何も見えていなかったことに気付く。感じる痛み。身も心も……それは日常化して麻痺していたこと。感覚の世界でしかなく、観ることはなかった。
きっと、閉ざしていた。
心も……その方が、楽になれるから。
その心が開かれた時は、皮肉にも、性的な……乱暴をされた冷たい雨の時だった。心が音を立てて折れたの……春だったのに、涙も冷たかった。
……でも、
……でもね、よく観て。
ほら、よく観たら、虹に変わるの。……冷たい涙は、温かい涙に変わった。
そのことを、この子が教えてくれたから!
「
……と、起こしてくれたの、
「怖い夢、見てた?」と、梨花は訊く。
「ううん、温かな夢。梨花が夢に出てきた」
この子なの。――たとえ冷たい世界観でも、温かな世界観に変えることができるということを、僕に教えてくれた子。心の目で物事の本質を見抜くことを教えてくれた。
それが理解できた時――
僕は人生の讃歌にも似たような、ときめきを覚えた。折れた心は、また強く。強き生命の力で、生き生きとした心へと変えていった。……あの時、早まらなくて良かった。もう少しだけ待ってみて、もう少しだけ頑張ってみて。
そんなに遠くはないの。
そんなに懸け離れたことでもないの。……すぐそばにあるんだよ。
学校も、我慢できなかったら逃げてもいい。
立ち直るにも、時間がかかってもいい。だから、命はかけないで。
死を選んじゃ絶対ダメ。
死を選んじゃ……
だって、この先にはもっと、素敵なことがいっぱいあるんだから。
僕もそうなの。
生きているから、それがわかったの。物事の本質……お題の「直観」ということも。
そして僕は、
「ありがと、梨花……」
と、そっと言った。……一人ぼっちじゃないの。誰も。物事に変化を与えるきっかけは自分自身。心の目で物事の本質を見抜くことができた時、きっと、その物事よりも、自分の心は大きくなっていることだろう。――そこに大いなる前進があると確信する。
直感と思いきや、直観……って? 大創 淳 @jun-0824
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