今日のネイル

ドレスコードはあってなきもの

　藤色の爪がキーボードの上で踊る。

　午後に開かれるオンライン会議の資料作りをしているのだ。

　勤務先の部署はコロナ禍の影響で完全在宅勤務となった。通勤ラッシュだった時間は、おうちでゆっくりネイルを楽しむことにしている。

　誰に見せるでもない、自分の気持ちをあげるためだ。

　コレクションはしていたものの、アパレルや化粧品、芸能関係でもない仕事に薄いピンク以外のネイルをしていくのは憚られる。カラフルな小瓶は内容量が減らないままだ。

　そして思ったのだ。

　うつらないからといって、パジャマで会議に出る人がいるなら、ネイルもちょっとは冒険してもいいんじゃないかと。

　仕事を終えて、外に出られない分家の大掃除をして。そうしたらネイルはすぐに剥げてくる。

　そうしたらラメを重ねたりシールをはって隠し、どうにもならなければ、また新しい色をぬる。

　そのときの気分にあわせ。

　家にこもっていつも目にする光景は変わらない。

　だからこそ、よく目につく指先を、私は変えるのだ。